台北の國立故宮博物院は、中国の歴代にわたる優れた70万件近くもの文物を収蔵することで知られた世界的な博物館です。そのコレクションは歴史的にきわめて重要なものばかりで、これらを抜きにしては中国文明の『本質』を理解することはできません。本展覧会では、その所蔵品のなかからとくに110件を厳選し、中国の文化と歴史を語るうえで欠くことのできない『神品』の数々を公開します。皇帝たちが収集し、権力を象徴するものと位置づけた文物を通じて、中国文明の神髄をひろくご紹介します。最後になりましたが、本展覧会は、日華議員懇談会をはじめ、多くの方々のご努力によって開催が実現しました。また、貴重な所蔵品をご出品くださいました國立故宮博物院ならびに多大なご支援とご協力を賜りました関係各位に厚くお礼申し上げます。
2014年7月 主催者
展示は終了しました
官吏登用の選抜試験として隋・唐時代から「科挙 かきょ 」を採用した中国では、豊かな教養をもった支配階級の士大夫 したいふ が、政治・経済だけでなく文化の指導者としても活躍した。さらに彼らの上に君臨する皇帝も、学問や芸術の新たな潮流を積極的に作り上げてゆく。本章では、このような知識人が愛した、陶磁器の最高峰である北宋時代の汝窯 じょよう の青磁、宋・元時代に表現の極みに達した書画の優品、そして彼らが憧れを寄せた古代の権力の象徴ともいえる青銅器を展示し、皇帝や士大夫の美意識にせまる。
中国では、古くから権力を象徴する目的で多彩な器物が作られた。たとえば古代の玉 ぎょく や青銅器は、統治者が執り行う祭祀に欠かせない礼器であるため、歴代の皇帝が王位の正統性を示す神聖な器物として熱心に収集した。また陶磁・漆工などの分野では、官営の工房を中心に精緻で高雅な名品が制作された。本章では、古玉器・青銅器から明時代の工芸まで、美しく巧みに作り上げられた器物の世界を展示する。
満州族が建てた清王朝は、康煕帝 こうきてい ・雍正帝 ようせいてい ・乾隆帝 けんりゅうてい の治世にもっとも国力を充実させた。少数の異民族に過ぎなかった彼らは、漢民族が培ってきた伝統を積極的に学び、西洋の文化をも取り込んで多文化を融合していった。なかでも乾隆帝は伝統的な文化を深く理解し、中国の歴史や文化そのものを再編してゆく。本章では皇帝が主導した文化事業とともに、官営の工房で制作された超絶技巧の精緻な陶磁などを紹介する。