マルティーノ=マルティーニ作
分野:絵画 時代:ヨーロッパ・1655年
品質:紙本銅版手彩 法量:縦51.3×横62.6cm
イタリア・トレント出身の宣教師マルティーニがつくった日本図であり、ブラウ編『新中国地図帳』(1655年、アムステルダム)に収められました。
日本列島は南西から北東にかけて、比較的正しい方向に伸びています。東北地方の海岸線も、それまでのオルテリウス・ティセラ型日本図と大きく異なって正確です。能登半島・紀伊半島・房総半島なども正確に描かれ、蝦夷島の位置もほぼ正しいものです。朝鮮も島でなく半島として描いており、正確な最新の地理情報が盛り込まれています。
マルティーニは、都合10年近く中国に滞在していたので、羅洪先作の『広輿図』(16世紀後半)を手に入れ、これを情報源としてこの地図を作ったのだと考えられています。
(しんせいかくにほん・えぞず)
ヤン=ヤンソン作
分野:絵画 時代:ヨーロッパ・1658年
品質:紙本銅版手彩 法量:縦50.3×横60.3cm
アムステルダムの地図作者ヤンソンがつくった日本・蝦夷図の代表的な作品。ヤンソン編著『新地図帳』(1658年、アムステルダム)に収載されました。
フリースの蝦夷探検の成果を忠実に生かしたために、樺太を北海道の一部だと勘違いし、ウルップ島も地図の右端にかかる巨大な陸地(「カンパニースランド」)となってしまいました。また、旧地図帳よりも縮尺を大きくしたため、地名の誤謬や書込み箇所のずれなどが目立ちます。朝鮮も半島でなく島として描いており、17世紀半ばのヨーロッパのアジア地理認識の限界を示す資料でもあります。
フランソワ=カロン作
分野:絵画 時代:ヨーロッパ・1663年
カロンが1661年にオランダで刊行したものをドイツ語訳したものです。カロン及びショートン著『強大な王国日本とシャムに関する真実の記録』(1663年、ニュルンベルク)及び、カロン著『日本大王国志』(1663年、ニュルンベルク)に収載されました。
フランスのユグノー派出身のカロンは、オランダ人の料理人助手として断続的に日本で20年以上を過ごし、最終的にオランダ商館長にもなった、かなりの日本通&アジア通。この地図を制作したそもそもの動機は、本州や蝦夷島が島かどうかを示すことにあったのですが、結局誤った情報を示すことになってしまいました。
アブラハム=オルテリウス作
分野:絵画 時代:ヨーロッパ・17世紀初頭
品質:紙本銅版手彩 法量:縦41.6×横54.4cm
アントウェルペン(アントワープ)の地図作者オルテリウスが作ったアジア図です。1610年代頃の地図帳に収載されたものでしょう。
日本・朝鮮および東南アジアがユニークな姿で描かれています。ポルトガル人地図作家ヴェリュの日本図にのっとって、日本を楕円形に描いています。もちろん蝦夷地(北海道)はありません。 ちなみに、朝鮮は欠片も描かれていない状況です。
ただし、琉球は「Lequiho Grande」(大琉球)として描かれています。西から東へ向かってきたヨーロッパ人にとっては、日本よりも、まず独立国琉球王国の存在の方が身近だったからでしょう。海中に帆船が2艘描かれています。
ホドカス=ホンディウス作
分野:絵画 時代:ヨーロッパ・1606年
品質:紙本銅版手彩 法量:縦44.4×横54.4cm
アントウェルペン(アントワープ)の地図業者ホンディウスが、メルカトールの銅版を引き継いで作成したヨーロッパ製銅版中国図です。1606年刊行の地図帳に収載されました。
中国のみならず、日本・朝鮮を包括的に描く初期の地図として貴重です。日本・朝鮮のかたちはおおむねオルテリウス系のそれを踏襲しています。海上には、ヨーロッパ船やジャンク船が描かれ、中国にはマルコポーロの記述を参考にしてか帆で走る車を描いています。朝鮮は島のように描かれますが、そこには「半島であるかもしれない」という注意書きが見えます。イエズス会宣教師が処刑されている図もあり、当時のヨーロッパでは、アジアが野蛮な地域としてイメージされていたことが良く分かります。
ホドカス=ホンディウス作
分野:絵画 時代:ヨーロッパ・1623年
品質:紙本銅版手彩 法量:縦44.5×横55.8cm
アントウェルペン(アントワープ)の地図作者ホンディウスが作成しました。メルカトール・ホンディウス編の地図帳(1623年、アントウェルペン)に収載。
蝦夷地(北海道)こそないものの、日本や東南アジアを比較的正確に描いていますが、朝鮮は半島でなく島として描かれ、形もティセラ型です。琉球は「Lequio Grande」(大琉球)として描かれています。ニューギニアは島として描かれていません。海中にガレオン船やダウ船などの帆船が4艘と、海獣が5匹描かれています。
ヴィンチェンゾ=マリア=コロネリ作
分野:絵画 時代:ヨーロッパ・1694年頃
品質:紙本銅版彩色 法量:縦49.5×横68.6cm
この地図を作ったのは、ヴェネツィア共和国の公式地理学者コロネリです。タイトルを書いた箱にイエズス会のマークがあり、本地図がイエズス会に献呈されたものであることが書かれています。『世界地誌』(1694年頃、ヴェネツィア)に収載。
蝦夷(北海道)の南端に「ユピの韃靼」と記され、松前藩の存在を認識していたことも分かります。石見銀山を描き、佐渡金銀山も描いています。日本海に船1艘。モンタヌスの描いた船から取材したデザインそのままの日本船です。朝鮮は、島ではなく、半島としてしっかり描かれています。
(こんよぜんず)
南懐仁(なんかいじん:フェルディナンド=フェルビースト)作
分野:絵画 時代:中国 清代・1674年
品質:紙本木版墨刷 法量:〔1〕157.5×58、〔2〕157.5×58、〔3〕154.5×58、〔4〕157.5×58、〔5〕159.0×5、〔6〕158.5×58cm
康煕13(1674)年、イエズス会士フェルビーストにより刊行された、大型の両半球世界地図です。北京で制作されました。ヨーロッパ製の地図を漢訳したものですが、東半球図にはフリースの探検航海(1643年)により判明した北海道の一部を描くなど、最新の地理情報も加味されています。中国・朝鮮で人気を博し、19世紀になっても再刊行されました。本作品はもともと8幅1組なのですが、右端・左端の欠いており、九博本は、6幅のみで構成されています。