特別展

特別展『京都妙心寺 禅の至宝と九州・琉球』

特別展『京都妙心寺 禅の至宝と九州・琉球』の見どころ

九州国立博物館オリジナルの「妙心寺展」

平成21年(2009)、妙心寺開山・無相大師六五〇年遠諱を記念する「妙心寺展」は、東京国立博物館(1月20日〜3月1日)と京都国立博物館(3月24日〜5月10日)、名古屋市博物館(10月10日〜11月23日)でも開催されましたが、九州国立博物館の「妙心寺展」は、他会場からの巡回展ではありません。妙心寺だけでなく、九州・沖縄の妙心寺派寺院に伝わる名宝を大々的に取り上げ、九州国立博物館独自の視点を強く打ち出しました。

国宝4件、重要文化財35件、その他初公開の文化財も半数以上

無相大師ゆかりの寺宝をはじめ、妙心寺の禅文化を彩る名宝の数々が出陳されます。また九州・沖縄の妙心寺派寺院から出陳される文化財は、この展覧会を機に新たに実施した調査による成果であり、そのほとんどが初公開となります。

琉球仏教美術の名品が一堂に

琉球王国の仏教美術の名品がまとまって紹介されるのは初の機会となります。なかでも圧巻は、沖縄県石垣市・桃林寺(とうりんじ)の金剛力士像(仁王像)です。京都や九州で一般的に見る金剛力士像と異なり、独特かつ圧倒的な気迫を放っています。

会期

平成22年1月1日(金・祝)〜2月28日(日)
*(会期中展示替えあり)

休館日

月曜休館

*(月曜日が祝日・振替休日の場合は開館、翌日休館。ただし1月4日(月)は開館)

会場

九州国立博物館 3階 特別展示室

(〒818ー0118 福岡県太宰府市石坂4ー7ー2)

開館時間

午前9時30分〜午後5時

(入館は午後4時30分まで)

出品目録

観覧料

一 般 1,300円(1,100円)

高大生 1,000円(800円)

小中生 600円(400円)

*カッコ内は前売りおよび団体料金です。
*団体料金は20名以上の場合です。団体の前売りはありません。
*上記料金で九州国立博物館「文化交流展(平常展)」も観覧できます。
*障がい者等とその介護者1名は無料です。展示室入口にて障害者手帳等の提示が必要です。
*満65歳以上の方は( )内料金で入場できます。購入の際に年齢の分かるもの(健康保険証、運転免許証など)の提示が必要です。
*キャンパスメンバーズの方は団体料金で入場できます。購入の際に学生証、教職員証等の提示が必要です。

主催

九州国立博物館・福岡県、臨済宗妙心寺派大本山妙心寺、西日本新聞社、TVQ九州放送

後援

文化庁、㈶九州国立博物館振興財団、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県、九州・沖縄各県教育委員会、福岡市教育委員会、北九州市教育委員会、太宰府市、西日本リビング新聞社、crossfm、FMFUKUOKA、LOVEFM、天神エフエム、西日本鉄道、九州旅客鉄道、西日本高速道路九州支社、㈳日本自動車連盟福岡支部、福岡県私学協会、福岡商工会議所、㈳福岡市タクシー協会、太宰府市商工会、太宰府観光協会、㈳日本旅行業協会九州支部、西日本文化サークル連合、西日本新聞天神文化サークル

協賛

メモリード

特別協力

太宰府天満宮、花園大学

協力

近畿日本ツーリスト、あらい、かねふく、損保ジャパン、(財)福岡文化財団

前売券発売場所

ローソンチケット(Lコード84645)、チケットぴあ・ファミリーマート(Pコード688│358)、セブンイレブン(商品コード前売3002087/当日3002088)、JTB各支店・JTBトラベランド各店・JTB総合提携店、JR九州の駅みどりの窓口、JR九州旅行支店・駅旅行センターほか主要プレイガイドで発売予定

お問い合わせ

050-5542-8600(NTTハローダイヤル午前8時〜午後10時)

ごあいさつ

 このたび、九州国立博物館におきまして、大本山妙心寺(みょうしんじ)開山・無相大師(むそうだいし)(関山慧玄(かんざんえげん)禅師、1277〜1360)の650年遠諱(おんき)を記念する特別展「京都妙心寺 禅の至宝と九州・琉球」を開催いたします。
 京都・花園の妙心寺は、建武4年(1337)、花園法皇(はなぞのほうおう)の離宮を禅寺とし、関山慧玄禅師を開山として創められた臨済宗の名刹(めいさつ)です。以来六世紀半にわたり臨済禅の中枢としての歴史を積み重ね、今日では臨済宗諸派のなかで最大規模となる末寺数3400を超えるなど、まさに「臨済禅の雄」と称することができましょう。
 この展覧会は、妙心寺創建以来、脈々と今に伝えられた関山禅の真髄(しんずい)と、九州・沖縄の地で花開いた多彩な禅文化の粋を示す120件におよぶ文化財を展覧いたします。国宝、重要文化財が多数含まれるのはもちろん、それ以外の文化財も大半が初公開のものばかりです。妙心寺の禅文化とその心にふれる好機であるだけでなく、近世九州における妙心寺派の展開や琉球の仏教美術を概観する初の機会ともなります。より多くの方々にご覧いただけますよう、みなさまのご協力を賜りたくお願い申し上げます。

主催者

ごあいさつ

 妙心寺は、建武4年(1337)に花園法皇が自らの離宮を改めて禅寺としたことに始まります。
 禅を深く信仰していた法皇が開山に迎えた関山慧玄禅師(諡号(しごう) 無相大師)は大燈国師から嗣法した後、美濃伊深の山里で修行した名僧です。
 平成21年は、その無相大師が亡くなられて650年を迎えます。妙心寺では50年に一度厳修される遠諱(おんき)大法会を勤め、無相大師の遺誡(ゆいかい)である「請う其の本を努めよ」のお言葉と、花園法皇のお言葉である「報恩謝徳」を掲げ、広く勝縁を結ばせていただいております。
 今般の九州国立博物館での妙心寺展も遠諱記念事業の一つです。妙心寺の宝物「関山」道号、「黄鐘調鐘(おんじきちょうしょう)」、退蔵院様所蔵の「瓢鮎(ひょうねん)図」(いずれも国宝)や龍虎図・花卉(かき)図などの屏風、また、九州琉球地域の妙心寺派の御寺院様から数多くの御宝物を出陳させていただきました。無相大師の教えを受け継いだ祖師がたの頂相(ちんそう)や、その祖師方に帰依した皇室、公家、諸大名との関係をも偲ぶことができます。また、白隠禅師や仙厓禅師のような庶民に親しまれた高僧の墨蹟・禅画をとおし、禅の心や禅の真髄を感じていただきたいと思います。
 開山無相大師の650年の法要に際し、現在につながる先賢の思いや生き方を今一度観じて、私たちのくらしを振り返ってみたいと思います。

臨済宗妙心寺派大本山妙心寺

展覧会構成
*画像はクリックすると拡大します。
第一部 京都妙心寺の名宝

 京都の妙心寺は、建武4年(1337)、花園法皇が花園の離宮を禅寺と改め、関山慧玄禅師(無相大師、1277〜1360)を開山として迎えて創(はじ)められた、臨済宗の名刹です。以来六世紀半にわたり、妙心寺は、開山からの一流相承(いちりょうそうしょう)によってその歴史が形成され、多彩な禅文化を育んできました。
 この章では、開山ゆかりの寺宝をはじめ大本山妙心寺および塔頭が今日まで伝えた名宝の数々を紹介し、妙心寺隆盛の歴史を概観します

主な作品

妙心寺の心のふるさと

宗峰妙超墨蹟「関山」道号

国宝 宗峰妙超(しゅほうみょうちょう)墨蹟「関山」道号(どうごう)
年代世紀 鎌倉時代 嘉暦4年(1329)
所蔵 妙心寺

*展示期間 1月1日〜17日

国宝 宗峰妙超(しゅほうみょうちょう)墨蹟「関山」道号(どうごう)
年代世紀 鎌倉時代 嘉暦4年(1329)
所蔵 妙心寺

*展示期間 1月1日〜17日

 徹底した修行の果て、「雲門関(うんもんかん)」の公案(こうあん)によりさとりを開いた関山慧玄(かんざんえげん)(無相大師)に、師の宗峰妙超(大燈国師(だいとうこくし)、1282〜1337)が授けた「関山(かんざん)」の道号と、道号に賦した詩の一種である頌(じゅ)からなる墨蹟。道号は、修行がある段階に達すると、師や目上の者から与えられるもので、これ以後、関山慧玄と称するようになりました。間近に実見すると、文字の筆致、行の流れとも、いたって自然な姿をみせ、その書風は、まるで青山(せいざん)の霊気のごとく、森厳(しんげん)さを湛えています。その神々しさに、宗峰妙超から関山慧玄に伝えられた禅風の一端を偲ぶこともできるでしょう。応仁の乱をはじめ妙心寺を襲った幾多の苦難を乗越え、護り伝えられた至宝中の至宝です。

妙心寺でいちばん新しい天皇自筆の書

昭和天皇宸翰「無相」号

昭和天皇宸翰(しんかん)「無相(むそう)」号
年代世紀 昭和時代 昭和34年(1959)
所蔵 妙心寺
*展示期間 1月19日〜2月28日

昭和天皇宸翰(しんかん)「無相(むそう)」号
年代世紀 昭和時代 昭和34年(1959)
所蔵 妙心寺
*展示期間 1月19日〜2月28日

 妙心寺の開山・関山慧玄の遠諱(おんき)法要は、亡くなって100年以後300年までは100年ごとに、350年(1709年)以降は50年ごとに、過去計9回営まれ、今回に至ります。500年遠諱(1859年)まではそのたびに歴代天皇から国師号が追贈され、また550年遠諱(1909年)では明治天皇から無相大師号が贈られました。この大幅は、前回の600年遠諱に際して昭和天皇が揮毫(きごう)したものです。昭和天皇の筆跡は、日本国憲法原本や褒章の御名などがありますが、これほどの大字の作例はほとんど知られておらず、貴重です。

国宝の兄弟鐘、1300年振りの共鳴

銅鐘

国宝 銅鐘(どうしょう)
年代世紀 飛鳥時代 戊戌年(698)
所蔵 妙心寺
(展示期間 全期)

銅鐘

国宝 銅鐘(どうしょう)〔特別出品〕
年代世紀 飛鳥時代 7−8世紀
所蔵 福岡県太宰府市・観世音寺
*展示期間 1月9日〜2月28日

国宝 銅鐘(どうしょう)
年代世紀 飛鳥時代 戊戌年(698)
所蔵 妙心寺
(展示期間 全期)

国宝 銅鐘(どうしょう)〔特別出品〕
年代世紀 飛鳥時代 7−8世紀
所蔵 福岡県太宰府市・観世音寺
*展示期間 1月9日〜2月28日

 わが国の銅鐘の中で最古の年号が記される妙心寺の銅鐘は、今回特別出品される観世音寺の銅鐘と大きさや形状が同じであることから、同じ工房で同時期に北部九州で鋳造されたと考えられています。妙心寺鐘は『徒然草(つれづれぐさ)』の著者・吉田兼好(よしだけんこう)がその音色を「黄鐘調(おんじきちょう)の鐘」と称え、観世音寺鐘は菅原道真がその音色を大宰府で聴き、漢詩に詠んでいます。屈指の美しい姿をみせる国宝の兄弟鐘が、約1300年の時を経て製作地九州でふたたび共鳴します。(両鐘が相並ぶのは1984年九州歴史資料館で開催された「国宝観世音寺鐘妙心寺鐘とその時代」展以来26年ぶり)

国宝の禅問答「瓢箪で鯰を捕まえることができるか?」書

瓢鮎図 如拙 筆

国宝 瓢鮎(ひょうねん)図 如拙(じょせつ) 筆
年代世紀 室町時代 15世紀
所蔵 退蔵院(たいぞういん)
*展示期間 1月1日〜17日

国宝 瓢鮎(ひょうねん)図 如拙(じょせつ) 筆
年代世紀 室町時代 15世紀
所蔵 退蔵院(たいぞういん)
*展示期間 1月1日〜17日

 室町幕府の第4代将軍・足利義持(あしかがよしもち)(1386〜1428)が、京都五山の高名な31名の詩僧と相国寺(しょうこくじ)の画僧・如拙(生没年不詳)に命じて制作させた作品で、「丸くすべすべした瓢箪(ひょうたん)で、ネバネバした鮎(なまず)(鯰のこと)を押さえ捕らえることが出来るか」という不思議なテーマを表したものです。ヒゲ面・豚鼻の男が大きな瓢箪を手にし、その前をひょうきんな顔をした大鯰がゆうゆうと泳いでいます。禅僧たちはこの珍問に対し、「うまく捕まえれば鯰のスープができるが、さてご飯がないのをどうしよう?」などとユーモアに答えています。

秀吉が愛児に与えた豪華なおもちゃ

玩具船

重要文化財 玩具船
年代世紀 桃山時代 16世紀
所蔵 妙心寺
*展示期間 1月1日〜24日

重要文化財 玩具船
年代世紀 桃山時代 16世紀
所蔵 妙心寺
*展示期間 1月1日〜24日

 豊臣秀吉がその長子・棄丸(すてまる)(鶴松)に与えた、全長203センチの豪華なミニ屋形船です。船底には台車が据え付けられています。甲板中央の壇上に棄丸が乗り、守り役に曳かせて遊んだと伝えられています。棄丸は、秀吉と淀君のあいだに生まれた待望の男の子で、秀吉も溺愛していましたが、天正19年(1591)わずか3歳でこの世を去りました。葬儀は妙心寺で行われ、その菩提をとむらうため祥雲寺という新たな寺が建立されました。この玩具船をはじめとする遺品は、祥雲寺に納められ、のちに妙心寺に移されました。最愛の幼子を亡くした天下人秀吉の哀しみはいかほどであったでしょうか。

絢爛豪華! これぞ妙心寺屏風

花卉図屏風 海北友松 筆

重要文化財 花卉(かき)図屏風 海北友松(かいほうゆうしょう) 筆
年代世紀 桃山時代 17世紀
所蔵 妙心寺
*展示期間 1月19日〜2月7日

龍虎図屏風 狩野山楽 筆

重要文化財 龍虎図屏風 狩野山楽(かのうさんらく) 筆
年代世紀 桃山時代 17世紀
所蔵 妙心寺
*展示期間 2月9日〜2月28日

重要文化財 花卉(かき)図屏風 海北友松(かいほうゆうしょう) 筆(右隻)
年代世紀 桃山時代 17世紀
所蔵 妙心寺
*展示期間 1月19日〜2月7日

重要文化財 龍虎図屏風 狩野山楽(かのうさんらく) 筆(左隻)
年代世紀 桃山時代 17世紀
所蔵 妙心寺
*展示期間 2月9日〜2月28日

 妙心寺に伝わる桃山時代の屏風はなぜか特大サイズです。いずれも縦178センチ、横360センチを測ります(通常サイズは縦155センチ、横360センチ)。こうした巨大さに加え金地濃彩の豪華な屏風であることから、「妙心寺屏風」と通称されています。
 花卉図屏風は、海北友松(1533〜1615)の筆。画面いっぱいに、右隻は咲き乱れる牡丹を、左隻は白梅・白椿と柴垣を描いています。花のある軽快な光景が豪華な金地に映えています。龍虎図屏風は、狩野山楽(1559〜1635)の筆。右隻は天空から降りてくる龍を、左隻は振り向きざまに吼える雄雌2匹の虎を描いています。猛獣たちの圧倒的な迫力が巨大な画面からあふれ出でてくるようです。妙心寺屏風の前に立つと、自分のちっぽけさを痛感することでしょう。

第二部 妙心寺と九州・琉球

 九州・沖縄地方にも桃山時代から江戸時代初期にかけて妙心寺派が伝播します。
 九州地方では、旧来の五山派の十刹・諸山が妙心寺派に吸収され、妙心寺派発展の基礎が築かれます。そして諸藩主の帰依と保護のもと、大いに繁栄してゆきました。また、17世紀の長崎に渡来した中国禅林の高僧のもとに妙心寺派の禅僧たちも参集し、研鑽の果てに当時の妙心寺の禅風を奮起したことも忘れられません。
 同じ頃、遠く南海の沖縄地方では、琉球国王の菩提所であった首里の円覚寺に妙心寺僧が住持として入寺します。円覚寺を頂点とした近世の琉球禅林もまた、琉球国や薩摩藩の保護を受け大いに発展しました。

主な作品

わが国最初の禅寺

勅額「扶桑最初禅窟」 後鳥羽上皇 筆

勅額(ちょくがく)「扶桑最初禅窟(ふそうさいしょのぜんくつ)」 後鳥羽上皇(ごとばじょうこう) 筆
所蔵 福岡市・聖福寺
(展示期間 全期)

勅額(ちょくがく)「扶桑最初禅窟(ふそうさいしょのぜんくつ)」 後鳥羽上皇(ごとばじょうこう) 筆
所蔵 福岡市・聖福寺
(展示期間 全期)

 建久6年(1195)、明庵栄西(みんなんようさい)(千光国師(せんこうこくし)、1141〜1215)は博多に日本最初の禅宗寺院・聖福寺を建立しました。聖福寺は、京都の建仁寺、鎌倉の寿福寺とともに栄西が残した最大の伽藍です。その山門には、後鳥羽上皇(1180〜1239)の筆と伝えられる「扶桑最初禅窟」額が高く掲げられています。よく見ると、下から見上げられることを計算して、上の文字ほど大きく書されていることが分かります。堂々とした存在感あふれる筆致に、聖福寺の寺格の高さと歴史の重みが見てとれます。

太宰府で学問の仏にも合格祈願

文殊五尊像 康俊 作

重要文化財 文殊五尊像 康俊(こうしゅん) 作
年代世紀 南北朝時代 貞和4年(1348)
所蔵 宮崎市・大光寺
(展示期間 全期)

重要文化財 文殊五尊像 康俊(こうしゅん) 作
年代世紀 南北朝時代 貞和4年(1348)
所蔵 宮崎市・大光寺
(展示期間 全期)

 「三人よれば文殊(もんじゅ)の知恵」のことわざがあるように、文殊菩薩は「智恵(ちえ)第一」とされる菩薩として多くの信仰を集めています。文殊五尊像とは、獅子の背に乗る文殊菩薩が四人の侍者を伴い、インドから遊行して中国の五台山(ごたいざん)へと向かう様子を表したものです。文殊菩薩は獅子に乗り、それを善財童子(ぜんざいどうじ)が合掌しながら先導し、優填王(うてんのう)が獅子の手綱をとり、錫杖と経巻を手にとる仏陀波利(ぶったばり)と杖を持つ最勝老人(さいしょうろうじん)がその後方に従っています。大光寺の文殊五尊像は、運慶五代の孫と名乗る仏師康俊ほかが制作したことが知られています。群像ながら手堅くまとめており、九州の中世彫像のなかでも屈指の優品といえます。

ぎょろ目の大達磨

達磨像 白隠慧鶴 筆

達磨像 白隠慧鶴(はくいんえかく) 筆
年代世紀 江戸時代 18世紀
所蔵 大分市・萬壽寺(まんじゅじ)
*展示期間 2月2日〜28日

達磨像 白隠慧鶴(はくいんえかく) 筆
年代世紀 江戸時代 18世紀
所蔵 大分市・萬壽寺(まんじゅじ)
*展示期間 2月2日〜28日

 白隠慧鶴(1685〜1768)は、公案(こうあん)による修行方法の体系化を推し進めたことで知られ、その門下は以後の臨済宗界の中心を担いました。今日の日本の臨済宗系の法脈はすべて白隠下につながることから「臨済宗中興の祖」と称えられています。宗教活動の一環として、アマチュアながら独特な味のある書画を盛んに制作しました。なかでも達磨像は白隠画の代名詞ともなっています。縦192センチ、横112センチをほこるこの「大達磨」は、白隠の代表作品としてあまりにも有名です。大画面いっぱいの巨大な顔と大きなぎょろ目。あまりにも強烈な迫力に誰もが圧倒されるでしょう。

史上最大!? ある禅僧の絶筆詩

提洲禅恕墨蹟 遺偈

提洲禅恕(だいしゅうぜんじょ)墨蹟 遺偈(ゆいげ)
年代世紀 江戸時代 安永7年(1778)
所蔵 大分県中津市・自性寺(じしょうじ)
*展示期間 2月2日〜28日

提洲禅恕(だいしゅうぜんじょ)墨蹟 遺偈(ゆいげ)
年代世紀 江戸時代 安永7年(1778)
所蔵 大分県中津市・自性寺(じしょうじ)
*展示期間 2月2日〜28日

 提洲禅恕(1720〜78)は、はじめ儒学を志して江戸に向かいますが、その道中で白隠慧鶴(はくいんえかく)と出会うことによって禅宗に身を投じました。白隠のもとで修行にはげみ、30代後半には白隠の語録『荊叢毒蘂(けいそうどくずい)』を編纂、四人の高弟(四天王)の一人にかぞえられます。その後、豊前国(大分県)中津藩主の菩提寺、自性寺(じしょうじ)の第12代住職をつとめ、同寺は九州における白隠門下の拠点となりました。  遺偈とは、臨終を間近にして書き遺す詩の一種で、この遺偈は、何よりもその圧倒的な大きさが特筆されます。その書は、白隠門下らしく気宇壮大で、また繊細な感情の動きもみてとれます。

喝! 臨済宗の開祖

臨済禅師像 古嶽宗亘賛 元信印

臨済禅師像 古嶽宗亘賛(こがくそうこう) 元信印
年代世紀 室町時代 16世紀
所蔵 大分県臼杵市・見星寺(けんしょうじ)
*展示期間 2月2日〜28日

臨済禅師像 古嶽宗亘賛(こがくそうこう) 元信印
年代世紀 室町時代 16世紀
所蔵 大分県臼杵市・見星寺(けんしょうじ)
*展示期間 2月2日〜28日

 臨済禅師は、中国・唐時代の禅僧で臨済宗の開祖。弟子に接する時、よく「喝」をくらわしたことで知られます。この臨済禅師像は、恐ろしいほど眼光が鋭く、大きな口を半開きし、右の拳をぎゅっと握りしめています。画面右下には「元信」印が捺され、上部には大徳寺の古嶽宗亘(1465〜1548)の賛が施されています。狩野元信(1477〜1559)は、15世紀から19世紀にいたるまで日本の画壇で最高の権力を保持し続けた狩野派の2代目棟梁で、大徳寺や妙心寺など禅宗寺院との交渉は密接でした。「元信」印が捺された作品は、このたび九州で初めて確認されました。

隣国の優美な仏画

摩利支天像

重要文化財 摩利支天(まりしてん)
年代世紀 高麗時代 14世紀
所蔵 聖澤院(しょうたくいん)
*展示期間 2月9日〜2月28日

水月観音図

久留米市指定文化財 水月観音(すいげつかんのん)
年代世紀 朝鮮王朝時代 世宗9年(1427)
所蔵 福岡県久留米市・梅林寺(ばいりんじ)
*展示期間 2月2日〜2月28日

重要文化財 摩利支天(まりしてん)
年代世紀 高麗時代 14世紀
所蔵 聖澤院(しょうたくいん)
*展示期間 2月9日〜2月28日

久留米市指定文化財 水月観音(すいげつかんのん)
年代世紀 朝鮮王朝時代 世宗9年(1427)
所蔵 福岡県久留米市・梅林寺(ばいりんじ)
*展示期間 2月2日〜2月28日

 妙心寺塔頭寺院のひとつ、聖澤院に伝わる摩利支天像は、高麗時代、14世紀の高麗仏画の優品として知られています。華麗なコスチュームとアクセサリーを身につけた天女が、団扇を手にして玉座に坐す姿を描いています。梅林寺の水月観音図は、制作年と発願者名が画面に記されており大変貴重です。大海原の岩座上でくつろぐ観音を描いています。周囲には、飛来する天部形と童女、善財童子(ぜんざいどうじ)が描かれていますが、画面左下で跪いて合掌する高貴な女性はこの絵の発願者の姿だと思われます。いずれも完成度が高く、前者は高麗王朝の、後者は朝鮮王朝の宮廷女性が関与したと想定されます。

日本最南端の仁王像

金剛力士像

沖縄県指定文化財 金剛力士像
久手堅(くでけん)(仁屋)昌忠(しょうちゅう)ほか作
年代世紀 第二尚氏時代 乾隆2年(1737)
所蔵 沖縄県石垣市・桃林寺(とうりんじ)
(展示期間 全期)

沖縄県指定文化財 金剛力士像
久手堅(くでけん)(仁屋)昌忠(しょうちゅう)ほか作
年代世紀 第二尚氏時代 乾隆2年(1737)
所蔵 沖縄県石垣市・桃林寺(とうりんじ)
(展示期間 全期)

 石垣島の桃林寺は、日本最南端(最西端)に位置する妙心寺派寺院です。1611年、薩摩藩の命より建立されました。山門の左右に阿吽一対で安置される金剛力士像(仁王像)は、沖縄最大の木彫仏です。八重山産のオガタマ材から彫刻されており、琉球の人によって制作されたことが明らかな、現存最古の仏像でもあります。京都や九州で一般的に見る金剛力士像と異なり、独特かつ圧倒的な気迫を放っています。石垣島から1500キロメートル離れた福岡で、その魅力を大公開します。

会期中のイベント情報

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