- 密閉展示ケースと調湿剤
九州国立博物館では、10月の開館以来、平日で約1万人、休日で約2万人を超える多くのお客様で賑わっている。展示室では、人の出入りに伴い、チリやホコリが持ち込まれたり、体温や息による温度や湿度の変化が生じている。「多くのお客様に、貴重な文化財を安全に美しく見ていただく」ために、九州国立博物館では最高の展示ケースを用いている。
展示ケースは、展示室の壁面にある壁付タイプ[写真1]と、可動式の単体タイプ[写真2]がある。壁付展示ケースは、ケース内を空調するもの、ケースを密閉するもの、そのいずれでもないものとに大きく分けられる。ケース内を空調するものでは、空調機の故障や文化財へ風が当たることなどの懸念があるため、九州国立博物館では密閉型の展示ケースを採用し文化財を展示している。密閉展示ケースの指標は、ケース内外の空気交換がどれくらいの頻度かを表す換気回数(一日あたり何回空気が入れ替わるか)がある。本博物館の展示ケースは、壁付ケースで0.3回/日、単体ケースで0.1回/日と、密閉展示ケースとしては世界でもトップクラスの性能を持っている。
しかし、ケース内の空気の入れ替わりが少ないということは、ケース内の照明による温度上昇とそれに伴う相対湿度の低下、ケースの内装材や展示台から放出される有害ガスによる文化財への影響などが問題となる。そこで本博物館では、相対湿度の低下を防ぐために調湿剤[写真3]を、また有害ガスによる影響を防ぐためにガス吸着フィルター[写真4]を設置する対策をとり、文化財を劣化させる要因を最小限に抑えるよう努めている。調湿剤は、漆工や染織などの工芸品と木製品は相対湿度60%、金工品や出土金属製品などは50%、民俗資料など複合材料の文化財は55%と、ケース内に展示する文化財に合わせ相対湿度を調節している。
以上のような対策を講じることで、本博物館では、文化財の保存と公開の両立に努めている。