本展覧会は、九州国立博物館が平成27年10月に開館10周年を迎えることを記念して開催する特別展の第一弾です。「日本文化の形成をアジア史的観点から捉える」という開館以来の基本コンセプトに鑑み、16世紀後半の動乱の九州、そしてアジアの海を舞台として活躍した戦国大名、ならびに戦国の気風を受け継いだ豊臣大名の姿に迫ります。
九州北部の覇者にして遙かなる世界を見すえた大友宗麟、その強力なライバルである毛利元就・島津義久・龍造寺隆信、豊臣秀吉の時代に活躍した立花宗茂・鍋島直茂・黒田長政・加藤清正・小西行長、海を舞台として活躍した宗義智・松浦隆信など、本展覧会の主人公は一人ではありません。各大名家・菩提寺などで大切に守り継がれてきた肖像画、武具・甲冑類、遺愛道具のほか、海外交流にまつわる伝世品や考古遺物をとおして、アジアの海に開かれた九州の地を舞台として活躍した大名たちの軌跡を追います。
主催者
豊後の戦国大名・大友宗麟(1530〜87)は、西国の覇者・大内義隆の没後、一挙に九州北部の覇者となりました。東アジア・東南アジア・ヨーロッパとの貿易を推進し、キリシタン文化を受容したため、豊後府内は国際性豊かな都市に成長しました。しかし、島津義久との耳川合戦で大敗を喫し、宗麟の栄光は影をひそめました。島津軍の北上の脅威にさらされた宗麟は、豊臣秀吉の軍門に降り、徹底抗戦を貫いた家臣・立花宗茂は、豊臣大名として自立しました。宗麟の栄光と挫折の軌跡をとおして、戦国動乱の九州の歴史を紐解きます。
安土桃山時代・天正15年(1587)賛 京都・大徳寺瑞峯院蔵
【展示期間】5月19日〜5月31日
大友宗麟(1530〜87)
豊後を本拠とする戦国大名・キリシタン大名。九州北部の覇者。アジア・ヨーロッパとの貿易で栄華を誇るも、島津義久との決戦に敗れて挫折した。
江戸時代・寛永20年(1643) 柳川・福厳寺蔵
立花宗茂(1567〜1642)
筑後の大名。大友家の勇将として島津軍に抗戦。豊臣大名に抜擢されるも、関ヶ原合戦で豊臣方に参じて失脚。大坂の陣で功績をあげて旧領を回復し、柳川藩11万石の基礎を築いた。
戦国の九州を舞台として大友氏との決戦を繰り広げた毛利元就・島津義久・龍造寺隆信、豊臣大名として九州の地に踏み入れた小早川隆景・黒田長政・小西行長・加藤清正など、戦国動乱のクライマックスを彩った大名たちの足跡を、各大名家・菩提寺などで大切に守り継がれてきた肖像画・武具甲冑・遺愛道具からたどります。
島津義久 しまづよしひさ (1533〜1611)
薩摩を本拠とした戦国大名。九州南部を統一し、大友宗麟との決戦に勝利。一躍、九州の覇者となるも、豊臣秀吉の九州平定に屈した。
本展には安土桃山時代の島津家当主を描く「島津某像」が出品されます。
安土桃山時代・16世紀 佐賀・宗龍寺蔵
龍造寺隆信(1529〜84)
肥前の戦国大名。大友氏衰退の機に乗じて肥前南部を平定。さらなる勢力拡大をめざすも、島津氏との決戦に敗れて戦死した。
安土桃山時代・文禄3年(1594)賛 広島・米山寺蔵
小早川隆景(1533〜97)
伊予・筑前・筑後・肥前の大名。父・毛利元就の九州進出の最前線として活躍。豊臣秀吉に抜擢され、伊予、ついで筑前一国・筑後2郡・肥前2郡を治めた。
江戸時代・17世紀 熊本・本妙寺蔵
加藤清正(1562〜1611)
肥後の大名。武勲派の豊臣大名として肥後北部を治める。関ヶ原合戦で徳川方として武功をあげ、 肥後一国を治め、熊本藩54万石の基礎を築いた。
江戸時代・寛永2年(1625) 福岡・崇福寺蔵
黒田長政(1568〜1623)
豊前・筑前の大名。武勲派の豊臣大名として、豊前6郡を治める。関ヶ原合戦で徳川方として武功をあげ、小早川秀秋に替わって筑前一国を治め、福岡藩52万石の基礎を築いた。
小西行長 こにしゆきなが (?〜1600)
肥後中部の豊臣大名・キリシタン大名。文禄・慶長の役では戦争の回避・終結に尽力。関ヶ原合戦で豊臣方の主軸を担い、はかなくも刑場の露と消えた。
大内氏の遺産を継承してアジア貿易をめざす毛利元就、九州の覇者として琉球王国への外交圧力を強める島津義久、海の武士団から大名に成長した松浦隆信、豊臣・徳川政権下で朝鮮王朝との国交維持に奔走した宗義智、朝鮮の磁器技術を肥前に根付かせた鍋島直茂。安土桃山時代から江戸時代初期にかけての海外交流にまつわる伝世品から、アジアの海と向き合う大名たちの姿に迫ります。
毛利元就 もうりもとなり (1497〜1571)
安芸を本拠とする戦国大名。中国西部の覇者。貿易港・博多の支配をめざして九州に進出し、大友宗麟と対決するも、出雲尼子氏の南下に備えて撤退。子の吉川元春・小早川隆景と孫の輝元に後事を託し、75年の生涯の幕を閉じた。
本展には重要文化財 毛利元就寿像(山口・豊栄神社)が期間限定で出品されます。【展示期間】4月21日〜5月10日
江戸時代・18~19世紀 長崎・松浦史料博物館蔵
松浦隆信(1529〜99)
肥前・壱岐の大名。海の武士団・松浦党の流れをくむ。平戸を拠点として肥前北部・壱岐に勢力を拡大し、明から来航する商船との貿易を振興。平戸藩6万石の基礎を築いた。
江戸時代・17世紀 長崎・万松院蔵
宗義智(1568〜1615)
対馬の大名。文禄・慶長の役では義父・小西行長とともに戦争の回避・終結に尽力。関ヶ原合戦後、徳川政権下で日朝国交回復に尽力し、対馬藩10万石の基礎を築いた。
江戸時代・貞享2年(1685)佐賀・高傳寺蔵
鍋島直茂(1538〜1618)
肥前の大名。龍造寺家の重臣として隆信死後の主家を支える。関ヶ原合戦では当初豊臣方に参じたが、徳川方に寝返り、柳川城の立花宗茂を攻略。佐賀藩36万石の基礎を築いた。
平成17年10月の開館記念特別展「美の国日本」では、九州ゆかりの名品の数々が観覧者を魅了しました。あれから10年。開館10周年記念特別展の第1弾である本展覧会では、「美の国 日本」の同窓ともいうべき作品9件が集結します。珠玉の名品との再会をお楽しみください。
本展では、戦国大名たちの手紙をテーマにした体験コーナーを用意しました!
礼儀作法を重んじる戦国大名たちの手紙には、様々な決まりごとがありました。手紙の用紙や封の仕方、サインなど、戦国大名たちの手紙文化を実際に体験してみましょう!