九州国立博物館(所在地:福岡県太宰府市、館長:三輪嘉六)と凸版印刷株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:金子眞吾、以下凸版印刷)は、特別史跡「王塚古墳」の古墳内部を鑑賞・体験する簡易型ヘッドマウントディスプレイ(以下HMD*1)用バーチャルリアリティ(以下VR*2)コンテンツを共同で開発しました。2015年2月3日から九州国立博物館・文化交流展室で開催される、九州地方の装飾古墳をテーマにした特別展示「進化する博物館Ⅲ最新技術でよみがえる九州の装飾古墳」で一般公開します。
本コンテンツは、特別史跡「王塚古墳」(所在地:福岡県嘉穂郡桂川町)において、東京大学池内研究室と凸版印刷が2004年に共同研究として行った、石室内部の形状計測と壁画の分光情報の取得によって得られたデジタルアーカイブデータを活用。精確かつ高精細に再現された石室の内部空間と壁画の彩色を、スマートフォンを用いた簡易型HMDを用いて鑑賞できます。これにより、通常は公開されていない石室の内部へ実際に入っているかのようなリアルな没入感で、色鮮やかに描かれている壁画を360度鑑賞・体験できます。
本コンテンツ開発においては、九州国立博物館が学術監修と展示・公開を、凸版印刷がVRコンテンツの製作を行っています。なお、美術館・博物館における文化財をテーマにしたHMDコンテンツの展示は、今回が日本初となります。
開発の背景
九州国立博物館は2005年の開設以来、九州の装飾古墳の内部を再現したCG映像を制作・公開しています。凸版印刷は、1997年に文化財のデジタルアーカイブデータの公開手法としてVR技術を用いた「トッパンVR」を開発。以来、40以上のVR作品を製作し、国内外18か所にVR公開拠点を導入するとともに、近年ではHMDをはじめとするパーソナルデバイス向けVRコンテンツの開発に取り組んでいます。
今回、九州国立博物館と凸版印刷はスマートフォンを用いた簡易型HMD向けのVRコンテンツを共同開発。「王塚古墳」の石室内部を前室・後室・石屋形の3エリアに分類し、エリアごとに決められた文様を探すクイズ形式で鑑賞することで、古墳の構造や装飾を体験学習していきます。また石屋形エリアでは、石棺部に横たわり、埋葬者の視点で石室内を体感できます。本コンテンツは、スマートフォンとHMDのみで鑑賞が可能なため、展示場所に制限の少ない、より自由度の高い展示を実現しました。
特別史跡「王塚古墳」について
王塚古墳は6世紀中頃に製作されたと推測される前方後円墳です。昭和9年に採土工事中に偶然発見されました。馬具、武器、銅鏡、装身具、土器類などの副葬品も同時に出土しています。前方後円墳の形状の一部は既に失われていますが、復元すると全長約86m、後円部径約56m、前方部幅約60m、後円部高約9.5mに及ぶとても大きな前方後円墳です。その王塚古墳の最大の特徴は、古墳内部の壁面に赤・黄・緑・黒・白・灰の6色の色彩で描かれた盾・騎馬・星・わらび手文・三角文・靱(ゆき・矢筒の事)・双脚輪状文など多彩な文様が石室内ほぼ全面に描かれていることです。昭和27年には国の特別史跡に指定されています。現在、石室は完全に密閉されて保存されており、通常は見学することはできませんが、春と秋の年2回一般に公開されています。
今後の予定
九州国立博物館と凸版印刷は、王塚古墳に描かれた装飾をモチーフにした「進化する博物館Ⅲ最新技術でよみがえる九州の装飾古墳」特別デザインの簡易型HMDを九州国立博物館のミュージアムショップで2015年3月から販売する予定です。Webサイトからスマートフォン向けにストリーミングで提供するVRコンテンツを、この簡易型HMDを用いて鑑賞・体験。自宅や学校、実際の古墳など、好きな場所で何度でもVRコンテンツを鑑賞・体験できる新しい仕組みを提供します。
「進化する博物館III」について
「進化する博物館III最新技術でよみがえる九州の装飾古墳」ではこのVR映像展示のほか、九州地方の代表的な装飾古墳の模写やパネル展示、古墳内部の再現CG映像など、従来の展示とデジタル展示を組み合わせた未来の博物館展示のあり方を提案しています。
お問い合わせ先
凸版印刷株式会社広報本部
03-3835-5636
FAX 03-3837-7675
九州国立博物館文化交流展室
092-918-2813
FAX 092-918-2864