今から2万年ほど前、フランス南西部のヴェゼール渓谷にある洞窟に、壮大な壁画が描かれました。そこはラスコー洞窟。壁画を描いたのはクロマニョン人です。ラスコー洞窟の壁画は、彼らが描いた数ある壁画の中でも色彩の豊かさや、技法、そして600頭とも言われる圧倒的な数の躍動感あふれる動物画が格別にすばらしく、1979年に世界遺産に登録されました。壁画を保存するため、洞窟は現在非公開となっていますが、その魅力を広く人々に知ってもらうべく、フランス政府公認のもと製作された展覧会が世界巡回している「LASCAUX INTERNATIONAL EXHIBITION」です。そして、世界各国で人気を博しているこの巡回展に日本独自のコンテンツを加えた展覧会が「世界遺産ラスコー展」です。
本展では謎に包まれたラスコー洞窟の全貌を紹介するとともに、1mm以下の精度で再現した実物大の洞窟壁画展示によって、研究者ですら入ることができない洞窟内部の世界を体験することができます。また、クロマニョン人が残した芸術的な彫刻や多彩な道具にも焦点を当て、2万年前の人類の豊かな創造性や芸術のはじまりを知る旅にご案内いたします。
最後になりましたが、本展の開催にあたり、貴重な資料を出品いただきました、フランスの国立考古学博物館、国立先史博物館、古人類学研究所、アキテーヌ博物館をはじめ国内外の博物館、研究機関、ご支援、ご協賛、ご協力を賜りました関係各位に心から御礼を申し上げます。
ラスコー洞窟の一部を再現した展示室
*画像はイメージです
The Field Museum,Chicago,2013
クロマニョン人〔復元模型〕
Elisabeth Daynès
5匹のシカの頭部が、あたかも群れで川を泳いでいるように見えます。枝分かれした立派な角は、ラスコー洞窟でよく見られる描き方です。
Photographie N. Aujoulat-CNP-MCC
長い槍で腹を引き裂かれ、人に向かって角を突き出すバイソン。倒れた人の頭はなぜかトリ。ラスコー屈指の謎めいた壁画です。
Photographie N. Aujoulat-CNP-MCC
右向きのバイソンには7本の線が体に記されています。幾重もの線刻と多彩な色使いとを組み合わせ、複雑な絵を作りあげています。
Photographie N. Aujoulat-CNP-MCC
黒いバイソンが反対向きに2頭描かれています。バイソンは春先に冬毛が抜け落ち、生え変わるので、この絵は春の姿を表したものと考えられます。
Photographie N. Aujoulat-CNP-MCC
フランス・ジャン=ブラン遺跡 2万5千年〜2万年前
Musée d'Aquitaine-Lysiane Gauthier, Ville de Bordeaux
フランス・ペール=ノン=ペール洞窟遺跡 3万4千年〜2万5千年前
Musée d'Aquitaine-Florian David, Mairie de Bordeaux
フランス・ローセル岩陰遺跡
3万4千年〜2万5千年前(レプリカ)*写真は原品
Musée d'Aquitaine-Lysiane Gauthier, Mairie de Bordeaux
閉じられたラスコー洞窟
Maurice Bunio with permission from the Ministѐre de la Culture et de la Communication (MCC)
復元される壁画(ラスコー3)
Philippe Psaila, with kind permission from the Ateliers des fac- similés du Périgord (AFSP)
ラスコー洞窟近くを流れるヴェゼール川と周辺の風景
Jonathan Barbot