黄金のアフガニスタン 守りぬかれたシルクロードの秘宝

会 期:

1月1日(金・祝)〜2月14日(日)

休館日:

1月12日(火)、1月25日(月)、2月8日(月)

観覧料:

一 般 1,400円(1,200円)

高大生 900円(700円)

小中生 500円(300円)

*( )内は前売りおよび団体料金(有料の方が20名以上の場合。)。
*上記料金で九州国立博物館4階「文化交流展(平常展)」もご観覧いただけます。
*障害者手帳等をご持参の方とその介護者1名は無料です。展示室入口にて障害者手帳等(*)をご提示ください。
(*)身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、戦傷病者手帳、被爆者健康手帳、特定疾患医療受給者証
*満65歳以上の方は前売り一般料金でご購入いただけます。券売所にて生年月日がわかるもの(健康保険証・運転免許証等)をご提示ください。
*キャンパスメンバーズの方は団体料金でご購入いただけます。券売所にて学生証、教職員証等をご提示ください。
*チケット販売窓口では下記電子マネーがご利用いただけます。
注)ご利用いただけるのは当日券のみです。団体券・割引券等にはご利用になれません。
電子マネー
(WAON、nanaco、iD、Edy、Kitaca、Suica、PASMO、TOICA、manaca、ICOCA、nimoca、はやかけん、SUGOCA)
電子マネーアイコン

お問い合わせ:

050-5542-8600(NTTハローダイヤル午前8時〜午後10時/年中無休)

主催:
九州国立博物館・福岡県、アフガニスタン・イスラム共和国情報文化省、TNCテレビ西日本、西日本新聞社
共催:
九州国立博物館振興財団
特別協賛:
大和ハウス工業
協賛:
アルビオン アート、福岡トヨペット
特別協力:
文化庁、東京文化財研究所、文化財保護・芸術研究助成財団、日本・アフガニスタン協会
太宰府天満宮
協力:
ナショナル・ジオグラフィック、日本通運、損害保険ジャパン日本興亜、大伸社
後援:
外務省、駐日アフガニスタン・イスラム共和国大使館、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県、九州・沖縄各県教育委員会、福岡市、福岡市教育委員会、北九州市、北九州市教育委員会、太宰府市、太宰府市教育委員会、西日本リビング新聞社、FM FUKUOKA、cross fm、LOVE FM、西日本鉄道、九州旅客鉄道、 JAF福岡支部、NEXCO西日本九州支社、福岡県タクシー協会、福岡市タクシー協会、福岡商工会議所、太宰府市商工会、太宰府観光協会、日本旅行業協会、西日本文化サークル連合、西日本新聞TNC文化サークル
*本展は,政府による美術品補償制度の適用を受けています。

“ A nation stays alive when its culture stays alive.”
「自らの文化が生き続ける限り、その国は生きながらえる」

これはアフガニスタン国立博物館の入口に掲げられている言葉です。アフガニスタンにとって、いや世界中の人々にとって自らの文化を守ることがどれほど大事なことかは言うまでもありません。しかし、現実には世界の各地でさまざまな理由によって文化遺産が失われていることも事実です。本展覧会でご紹介するのは、まさに命懸けで守りぬかれたアフガニスタンの古代文化の粋です。内戦やテロといった苦難をくぐり抜け、今なおさんぜん燦然と輝き続けるアフガニスタンの至宝の数々は、私たちの心に自国の文化を尊ぶことの重要性を強く訴えかけてきます。

アフガニスタンは、インドの北西に位置し、パキスタン、イラン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、中国に囲まれた内陸の国です。古来、シルクロードの通るこの地域は、東西南北の文化が行き交う「文明の十字路」と呼ばれてきました。本展覧会では、前2100年頃から2世紀頃にかけて古代のアフガニスタンで栄えた文化を、4つの遺跡から出土した名宝によってご紹介します。
これらは首都カブールにあるアフガニスタン国立博物館に所蔵されていました。しかし、 1979年のソ連侵攻とそれに続く内戦などにより、博物館は甚大な被害を受け、収蔵品の多くは永遠に失われてしまったと考えられてきました。しかし、国の宝を守ろうとした勇気ある博物館員は、とりわけ貴重な文化財を秘密裏に運び出していました。
2004年4月、秘宝を大切に保管していた金庫の扉が再び開かれました。本展覧会はこれらの秘宝の再発見を契機に、アフガニスタンの文化遺産の復興を支援するために企画された国際巡回展です。2006年以来、世界10カ国で開催、すでに170万人以上が来場しています。
奇跡的に守られた古代アフガニスタンの至宝231件に加え、日本での展覧会では内戦のさなかにアフガニスタンから不法に持ち出され、日本で「文化財難民」として保護されてきた流出文化財15件をあわせて紹介します。
数々のドラマをくぐり抜けて今日に伝わるシルクロードの秘宝は、新たなアフガニスタンのイメージをあなたの胸に強烈に焼き付けることでしょう。


展覧会構成


第1章 テペ・フロール

第1章の解説を読む

アフガニスタンの北東部で、1966年に偶然発見された前2100〜前2000年頃の青銅器時代の遺跡。金銀器を副葬した墓地の一部と推定される。この遺跡は当時から貴重品だったラピスラズリの原産地に近く、テペ・フロールはメソポタミア文明とインダス文明とをつなぐ役割を担っていたと考えられている。

主な作品
作品は全てアフガニスタン国立博物館蔵 ©NMA/Thierry Ollivier

文明交流を語る黄金のゴブレット


幾何学文脚付杯

幾何学文脚付杯
きかがくもんきゃくつきはい
Goblet with geometric motif

前2100 〜前2000年頃
直径9.9cm

金製で中央アジアの青銅器時代に特徴的なゴブレット(脚台付の杯)。本来は、平底の小さな脚が付いていたが、残念ながら現在は失われている。外面に表された「凸形」モチーフは、祭祀(さいし)に関連した文様として、アフガニスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンなどで、前5000年から約3千年間にわたって使われている。


第2章 アイ・ハヌム

第2章の解説を読む

前4世紀、マケドニアのアレクサンドロス大王は東方に遠征し、アフガニスタンの地を訪れた。その後、前300年頃にアフガニスタン北部に作られたギリシア人の植民都市がアイ・ハヌムである。アクロポリスと2本の川で囲まれた要害の地に、神殿、宮殿、体育場、半円形の劇場などが築かれ、見事なギリシアの都市が建造された。コリント式の柱頭を用いた建築、ギリシア語碑文、ギリシアの神々の像が出土し、まさに東方に花開いたヘレニズム文化がよみがえる。

主な作品
作品は全てアフガニスタン国立博物館蔵 ©NMA/Thierry Ollivier

英雄ヘラクレスの肉体美


ヘラクレス立像

ヘラクレス立像
ヘラクレスりゅうぞう
Statuette of Heracles

前150年頃
高さ18.0cm
青銅

アイ・ハヌムの中心部にある寺院から出土した。ヘラクレスは怪力無双の勇者で、ギリシア神話の英雄。若々しくたくましい体つきで、左手には武器の棍棒(こんぼう)をかかえる。ギリシア神話のヘラクレスへの信仰が東方世界へも大きな広がりをみせていたことの証である。葉で作られた冠を自らかぶるのは、バクトリアに独特の姿である。

車に乗った大地の女神


キュベーレ女神円盤

キュベーレ女神円盤
キュベーレじょしんえんばん
Cybele Plaque

前3世紀
直径25.0cm
銀、鍍金

大きな冠をつけたキュベーレが有翼の女神ニケを従えて、2頭の獅子が引く戦車に乗る。天空の中央に太陽の神ヘリオスが燦然(さんぜん)と輝き、横に三日月と星がある。キュベーレは小アジアからギリシアで信仰された大地の女神、ニケは勝利を象徴するギリシアの神、戦車の形はペルシャ風で、多様な文化がこの1枚の円盤に凝縮されている。

デルフォイの神託


ギリシア語刻銘付石碑台座

ギリシア語刻銘付石碑台座
ギリシアごこくめいつきせきひだいざ
Stele base with inscription

前3世紀初
28.0×65.5×46.5cm
石灰岩

ギリシア語で書かれたこの銘文は、アイ・ハヌムの創始者の1人とされるキネアスというギリシア人に捧げられたもの。その言葉の中にデルフォイの神託の一部が含まれている。ギリシア中部にあるデルフォイには美しい青年の神アポロンの神殿があり、古代ギリシア人がここで受けた神託は、政治や外交のみならずあらゆることを規定した。

デルフォイの神託
「幼き者は行儀よき者となり
青年とならば自制知る者となり
壮年とならば正義知る者となり 老年とならば思慮分別知る者となれ さらば汝、悔なき死をえん」
(前田耕作『バクトリア王国の興亡』より)

第3章 ティリヤ・テペ

第3章の解説を読む

地元の言葉で「金の丘」を意味するティリヤ・テペ。アフガニスタン北部に位置するこの地で、1978年、遊牧民の有力者の墓が手つかずの状態で発見された。6基の墓に埋葬されていたのは女性5人と男性1人で、副葬された愛用品や身に着けていた装身具、衣服にちりばめられた装飾品には金やトルコ石がふんだんに用いられ、「バクトリアの黄金」と称されるにふさわしい輝きを放っている。その繊細な造形美や人物・動物の表情は多くの人々を魅了する。

主な作品
作品は全てアフガニスタン国立博物館蔵 ©NMA/Thierry Ollivier

ドラゴンをあやつる王の飾り


ドラゴン人物文ペンダント

ドラゴン人物文ペンダント
ドラゴンじんぶつもんペンダント
Pendants with "Dragon Master"

1世紀第2四半期
12.5×6.5cm
金、トルコ石、ラピスラズリ、ガーネット、カーネリアン、真珠

2号墓に葬られた女性の髪を飾っていた装飾品。宝石を鎖で繋いだ美しさは目にも耳にも訴える。中央には、遊牧民族の衣装を身につけ、冠をかぶった男性が立ち、両側のドラゴンとおぼしき神話上の動物を両手でつかむ。躍動感に満ちた姿は、遊牧民族の世界観を印象づける。

中国の戦車をひく神獣


靴留金具

靴留金具
くつとめかなぐ
Boot buckles

1世紀第2四半期
直径5.5cm
金、トルコ石、カーネリアン

2列の水滴形のトルコ石を巡らせた環の中央に、二輪戦車に乗る男性を表す。戦車を引く2匹の獣は翼のある神話上の動物。二輪戦車は丸みを帯びた天蓋(てんがい)をもち、支える柱には節がみられ、この地では産しない竹でつくられたことがわかる。戦車の形態も中国・漢代にみられるもので、東方文化との融合が一つの円形留金具の中にひろがっている。

生きているようなムフロン羊


牡羊像

牡羊像
おひつじぞう
Standing ram

1世紀第2四半期
5.2×4.0cm

特徴ある大きな角をもつ牡羊はムフロンという種。髪飾りかと思われ、羊の頭部にはさらに装飾を挿すための筒がある。いきいきとした顔立ちや、流れるようなあごひげ、ひづめの細部にいたるまで写実性を極めた造形は、比類ない技術の高さを示している。

豪華絢爛な遊牧民の剣


金製柄付短剣

金製柄付短剣
きんせいつかつきたんけん
Dagger with gold-covered shaft

1世紀第2四半期
37.5cm(鞘とも)
鉄、金、トルコ石

4号墓に葬られた男性の腰に提げられていた遊牧民特有の形態の短剣。その豪華な装飾には目を奪われる。円形のトルコ石で縁取られた柄部分には、翼をもつ神話上の動物が連続し、柄頭(つかがしら)に刻まれた葡萄(ぶどう)の蔓(つる)をくわえる熊は愛らしい姿をみせる。


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これが最古の仏像か


インド・メダイヨン

インド・メダイヨン 上:表 下:裏
Indian medallion

前1世紀第4四半期
直径1.6cm

4号墓の男性の胸の上に置かれていた金のメダイヨン。刻まれた文字から、表が恐怖を滅し去ったライオン、裏が仏陀の教えの広がりを象徴する法輪を転じる人とわかる。ティリヤ・テペ出土品で唯一仏教的なもので、裏の人物は仏陀の姿を表わした世界最古の例とする説がある。


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王妃のしるし、黄金の冠


冠


かんむり
Crown

1世紀第2四半期
45.0×13.0cm
金、トルコ石

6号墓に葬られた女性の頭部を飾る金の冠。5つの樹形の立ち飾りはハート形や三日月形に切り抜かれ、鳥も表現されている。貼り付けられた六つ葉のロゼッタから小さな円形の瓔珞(ようらく)がきらびやかに下がる。帯と樹形の立ち飾りはそれぞれ取り外しが可能で、遊牧民らしい工夫といえよう。この造形美は奈良県藤ノ木古墳の冠にもみられるように、遠く東アジアまで広まった。


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翼をもつアフロディーテ


アフロディーテ

アフロディーテ
Applique of Aphrodite

1世紀第2四半期 5.0×2.6cm 金、トルコ石

翼をもつ女性を象った金の飾板。下半身を覆う衣に手をかけるその姿は、ギリシア神話の女神、アフロディーテである。ヘレニズムの影響を受けた容姿は、ミロのヴィーナスのような美しさであるが、翼をもつ表現やその表情にはアジア文化との融合がみられる。


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第4章 べグラム

第4章の解説を読む

ベグラムは首都カブールの北約70km、海抜1600mの高地にある都市遺跡。1〜3世紀に中央アジアから北インドを支配したクシャーン朝の夏の都で、古代のカーピシー国の首都でもあった。都城の中で、入り口をレンガで厳重にふさいだ2つの部屋を発掘したところ、ローマやエジプトなど地中海世界のガラスや青銅、石膏製品、インドの象牙製品、また中国の漆器などが大量に発見され、大きな注目を集めた。 ギリシア・ローマの神々やインドの女神像、色鮮やかなガラス製品などは、 シルクロードを経由した東西交易がさかんだったことを物語る。

主な作品
作品は全てアフガニスタン国立博物館蔵 ©NMA/Thierry Ollivier

インドの女神


マカラの上に立つ女性像

マカラの上に立つ女性像
Woman standing on a makara

1世紀
高さ45.6cm
象牙

豊満な体つきで体をくねらせたなまめかしい姿の女性が、インド神話の怪魚マカラの上に立っている。マカラは水と深く関わる神秘的な動物で、その上に立つ女性は河の神と考えられる。インドの象牙は古代社会で大変に珍重され、ベグラムからは数百点にのぼる象牙製品が出土した。インドの象牙はローマへも輸出されていた。

若き男女を描いたガラス杯


脚付彩絵杯

脚付彩絵杯
きゃくつきさいえはい
Painted goblet

1世紀
高さ12.6cm 直径8.0cm
ガラス

ナツメヤシの収穫あるいは花を集めて花輪を編む場面を、黄色や青、赤、緑を巧みに使って色鮮やかに描き出す。ガラス質の顔料であるエナメルで絵付けをして焼き付ける技法は、エジプトで発達し地中海世界に広まった。ベグラムのガラス器は、吹きガラスや透かし模様、ミルフィオリなど当時の最高技術を駆使したもの。

物思う青年


青年上半身メダイヨン

青年上半身メダイヨン
Circular medaillon (torso of a young man)

1世紀
22.3cm
石膏

向かって左前方をみつめている青年上半身像。細いヘアーバンドでまとめた髪は、背中まで伸びている。石膏で作られたこのようなメダイヨンは、同様の図柄を銀器の装飾に用いるための見本として使われたもので、ギリシア・ローマの神話を主題とする作品が数多く見つかった。

エロスの恋


エロスとプシュケーのメダイヨン

エロスとプシュケーのメダイヨン
Circular medaillon (Eros and Psyche)

1世紀
16.5cm
石膏

背中に翼をつけたエロスが両手で大きな蝶を抱きしめたその瞬間を、まるで切り取ったかのように写実的かつ動的に表現している。愛と美の女神アフロディーテの息子エロスが、美女のプシュケーと心ならずも恋に落ちてしまう有名なギリシア神話の一コマを表している。

天翔ける神秘の獣


レオグリフ形腕木

レオグリフ形腕木
レオグリフかたうでぎ
Leogryph bracket

1世紀
30.0cm
象牙

ワシとオウム、ライオンが合体した空想上の動物レオグリフが、怪魚マカラの口から勢いよく飛び出している。レオグリフの嘴(くちばし)にかけた手綱をあやつる女性は、首飾、腕輪、腰帯などを身につける以外はほぼ裸で豊満な肉体を見せている。もともと玉座の一部と思われ、レオグリフ後頭部の枘(ほぞ)(現在は欠失)に肘掛けの横木が固定されていた。

ディオニュソスの仲間


シレノスのマスク

シレノスのマスク
Mask of Silenus

1世紀
9.5×7.9cm
青銅

ギリシア神話に出てくる半人半馬で山野の精。ブドウ酒と陶酔の神であるディオニソスの養育係、教師兼従者とされている。花冠をかぶった、陽気なひげ面の老人の姿で表現されることが多い。ディオニソスに付き従う半人半羊のサティロスに比べて年かさで、より賢く予言術に長けているとされる。小品ながらその表情は生命力にあふれている。

第5章 アフガニスタン流出文化財【特別出品】

第5章の解説を読む

アフガニスタン国内が混乱を極めていたさなか、カブールの国立博物館や国内各地の遺跡から多数の文化財が略奪され、不法に国外に持ち出された。その一部はわが国にも運ばれた。シルクロードを生涯のテーマとして描き続けた日本画家の平山郁夫氏は2001年、これらの「流出文化財」を「文化財難民」と位置づけ、ユネスコの同意のもと「流出文化財保護日本委員会」を設立、再びアフガニスタンに平和と安定が取り戻されるまでわが国で保護することを提唱した。これに賛同した方々から譲渡された文化財は、同委員会が保全管理してきた。本展覧会を契機にアフガニスタンへ無事に返還されることになった102件の文化財のうち、15件を特別出品する。

主な作品
いずれも流出文化財保護日本委員会保管

博物館が誇る仏教美術の名品


カーシャパ兄弟の仏礼拝

カーシャパ兄弟の仏礼拝
カーシャパきょうだいのぶつらいはい
Buddha worshipped by Kasyapa Brothers

2 - 3世紀
59.0×88.0×12.0cm
片岩
ショトラク出土

インドの火の神アグニを信奉するカーシャパ三兄弟は、仏陀の神通力を目の当たりにし、弟子千人とともに仏教へ改宗したという仏伝の一コマ。正面を見つめる中央の仏陀はひときわ大きく表され、その周りを行者の姿をした三兄弟と弟子や天人たちが囲んでいる。この作品は国立博物館を代表する仏教美術の名品であったが、1992年に盗難に遭い、パキスタン経由で日本に持ち込まれた。

柔らかな造形と精神性


女性像

女性像
Female figure

3 - 5世紀
高さ20.0cm
漆喰
ハッダ出土

アフガニスタンの仏教美術は、パキスタン北西部のガンダーラ美術と同じ文化圏に属し、片岩を用いた石造彫刻、漆喰や粘土を用いた塑造彫刻が仏教寺院を荘厳(しょうごん)した。この作品は穏やかな表情を浮かべた漆喰製の女性像で、おそらく供養者の姿を表わしたものだろう。深い精神性をたたえる造形は、高い芸術性を誇っている。

切り取られた石窟壁画


壁画 仏陀座像

壁画 仏陀座像
へきが ぶっだざぞう
Fragment with Seated Buddha

7 - 8世紀
24.0×28.5cm
土壁彩色
バーミヤーン石窟K洞

タリバンによる2001年のバーミヤーン大仏の破壊後、バーミヤーンとその周辺の仏教石窟から多数の壁画が切り取られ、国外に持ち出された。本作品は、弥勒菩薩坐像などを表した円盤周囲に配された坐仏の一つ。東京藝術大学が修復した。


この作品の『ほぼ30秒』紹介動画