文化財を災害から守るためには、日ごろの備えが大切です。そのためには、まずその所在を把握し、一点一点を調べる「悉皆調査(しっかいちょうさ)」が不可欠です。この悉皆調査は、従来専門家によって行われてきたものです。しかし近年、大規模災害の被災地において、市民が文化財調査や整理に取り組むようになりました。こうした市民参加型の悉皆調査は、文化財保全はもちろん地域の活性化にもつながるものです。
本シンポジウムでは、基調講演に、阪神・淡路大震災時に文化財レスキューの組織を立ち上げ、その経験から文化財の所在を余すことなく調べる悉皆調査の重要性を提言してこられた三輪嘉六氏を迎えます。事例報告では九州における悉皆調査の最新事例と阪神・淡路、中越、東日本大震災を受けて実施した市民との「協働」による文化財の悉皆調査の取り組みを紹介し、地域や市民とともに進める今後の文化財防災、減災を考えます。