特別展

特別展
ボストン美術館 日本美術の至宝

特別展『ボストン美術館 日本美術の至宝』の見どころ

ボストン美術館 日本美術の至宝
担当学芸員による特別展の紹介動画

会期

平成25年1月1日(火・元日)〜3月17日(日)

休館日

月曜日

*ただし1月14日(月・祝)、2月11日(月・祝)は開館、1月15日(火)、2月12日(火)は休館

会場

九州国立博物館 3階 特別展示室

開館時間

午前9時30分〜午後5時

(入館は午後4時30分まで)

観覧料

一 般 1,500円(1,300円)

高大生 1,000円(800円)

小中生 600円(400円)

*( )内は前売りおよび団体料金(20名以上の場合)です。
*上記料金で九州国立博物館「文化交流展(平常展)」もご覧いただけます。
*障がい者等とその介護者1名は無料です。展示室入口にて、障害者手帳等をご提示ください。
*満65歳以上の方は前売り一般料金でご入場いただけます。チケット購入の際に年齢が分かるもの(健康保険証・運転免許証等)をご提示ください。
*キャンパスメンバーズの方は団体料金でご入場いただけます。チケット購入の際に学生証、教職員証等をご提示ください。

主催

九州国立博物館・福岡県、ボストン美術館、NHK福岡放送局、NHKプラネット九州、西日本新聞社

共催

(公財)九州国立博物館振興財団

特別協力

太宰府天満宮

後援

外務省、アメリカ大使館、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県、九州・沖縄各県教育委員会(佐賀県除く)、福岡市教育委員会、北九州市、北九州市教育委員会、太宰府市、太宰府市教育委員会、西日本リビング新聞社、cross fm、FM FUKUOKA、LOVE FM、西日本鉄道、九州旅客鉄道、一般社団法人日本自動車連盟福岡支部、NEXCO西日本九州支社、(社)福岡市タクシー協会、福岡商工会議所、太宰府市商工会、太宰府観光協会、一般社団法人日本旅行業協会九州支部、NHK文化センター、西日本文化サークル連合、西日本新聞TNC文化サークル

協賛

損保ジャパン、大日本印刷、トヨタ自動車、みずほ銀行、三井物産、ふくや

協力

日本航空、日本貨物航空

前売券

ローソンチケット(Lコード81797)、チケットぴあ(Pコード765‒397)、セブン-イレブン(セブンコード019‒562)、イープラス・ファミリーマートほか主要プレイガイド

お問い合わせ

050-5542-8600(NTTハローダイヤル午前8時〜午後10時)

ごあいさつ

 アメリカのボストン美術館から日本絵画の粋を集めた特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」を開催いたします。

 同館は、質・量ともに世界有数の日本美術コレクションを誇り、〝東洋美術の殿堂〟とも称されます。そのコレクションの礎は、およそ百年前、ボストン美術館草創期に在職したアーネスト・フェノロサや岡倉天心によって築かれました。その後も収集が続けられ、現在、日本美術の収蔵品はじつに十万点を超えています。

 本展は、その中から名品46点を厳選してご紹介する、ボストン美術館史上最大規模の日本絵画展です。本展の開催にあたり、作品保護のため展示期間を厳しく制限しているボストン美術館では、その出品作品のほとんどを5年間にわたり公開を控え、準備をしてきました。

 また、同館では、日本とアメリカの協力のもと、ウィリアム・スタージス・ビゲローのコレクション寄贈100年記念事業として、大規模な文化財の保存修復事業を行ってきました。曽我蕭白の傑作「雲龍図」もその成果の一つで、世界に先駆けて初公開いたします。かつて海を渡った至宝の数々が一堂に里帰りする本特別展。日本美術の精華ともいえる名品の数々との出会いは、私たちに新たな感動を呼び起こしてくれるでしょう。

 最後になりましたが、本特別展の開催にあたり、貴重な作品をご出品いただきましたボストン美術館をはじめ、ご協賛、ご後援、ご協力を賜りました関係各位に厚く御礼申し上げます。

主催者

展覧会構成
第一章 仏のかたち神のすがた

 海外でも屈指の質の高さをほこるボストン美術館の仏教美術コレクション。本展では、その中から厳選した奈良時代から鎌倉時代までの仏教絵画17点をご紹介します。日本に残っていれば国宝や重要文化財の指定を受けるにふさわしい、美術史上欠かすことのできない名品ばかりです。

主な作品

東大寺に伝来した奇跡の逸品

法華堂根本曼荼羅図
 

法華堂根本曼荼羅図(ほっけどうこんぽんまんだらず)
一面 麻布着色 縦107.1 横143.5 奈良時代(8世紀)
Photograph (c)2012-2013 Museum of Fine Arts, Boston.

 霊鷲山(りょうじゅせん)において釈迦が説法する様子を麻布に描く。釈迦や菩薩の描写はもちろん、背景の本格的な山岳表現も見どころ。奈良時代にさかのぼる絵画は稀有で、日本のみならず東洋美術の歴史を語る上できわめて重要な作品である。かつて奈良・東大寺法華堂に伝わったことから、「法華堂根本曼荼羅図」と称される。

見る者を釘付けにする迫力

馬頭観音菩薩像
 

馬頭観音菩薩像 (ばとうかんのんぼさつぞう)
一面 絹本着色 縦166.1 横82.7 平安時代(12世紀中頃)
Photograph (c)2012-2013 Museum of Fine Arts, Boston.

 馬頭観音は六観音のうちの一つで、畜生道におちた衆生(しゅじゅう)を救済する仏として信仰されてきた。燃えるような赤い身体をもち、目を見開き一喝する表情は、見る者を威圧する凄みがある。それとは対照的に、白を基調とした着衣や台座は細かな截金(きりかね)や彩色によって美しく荘厳(しょうごん)され、華やかである。平安貴族たちが好んだ美麗の極致がここにある。

妖艶な美に込められた切なる祈り

普賢延命菩薩像
 

普賢延命菩薩像 (ふげんえんめいぼさつぞう)
一面 絹本着色縦141.7 横88.3 平安時代(12世紀中頃)
Photograph (c)2012-2013 Museum of Fine Arts, Boston.

 病を消し、生命力を増加させると信じられた普賢菩薩。四天王を従え、三つの頭をもつ白象に乗る。菩薩の丸みのある白い身体はわずかに赤みを帯び、生気に満ちている。一見すると、沈んだ色調で落ち着いた印象を受けるが、光背や着衣には、銀や金の截金をふんだんに用いて華麗な文様を施している。装飾性豊かな平安仏画の傑作である。

第二章 海を渡った二大絵巻

 日本美術コレクションの中でもひときわ傑出した存在が、遣唐使・吉備真備の活躍をユーモラスに描く「吉備大臣入唐絵巻」と、平治の乱を濃密で計算された画面構成でダイナミックに描く「平治物語絵巻」です。異なるコンセプトと手法で描かれた二つの傑作を、今回特別に全場面展示します。

主な作品

圧巻! 全長25メートルの大絵巻!

吉備大臣入唐絵巻
 

吉備大臣入唐絵巻(部分) (きびだいじんにっとうえまき)
四巻 紙本着色
巻第一 縦32.0 横674.6
巻第二 縦32.0 横459.3
巻第三 縦32.0 横722.3
巻第四 縦32.0 横599.7
平安時代(12世紀後半)
Photograph (c)2012-2013 Museum of Fine Arts, Boston.

 遣唐使として唐へ渡った奈良時代の学者・吉備真備(きびのまきび)(695〜775)が、さまざまな難問に立ち向かうという奇想天外な物語をユーモラスに描いている。
 唐に到着するやいなや高い楼閣に幽閉された真備は、唐で客死した阿倍仲麻呂の霊(鬼)に出会う。唐人は真備を試すため、『文選(もんぜん)』の解読や、囲碁の勝負を持ちかけるが、鬼の助けにより、真備はこれらを見事に退ける。
 後白河法皇(1127〜92)が制作させた絵巻コレクションの一つと考えられており、当時の絵所預(えどころあずかり)であった常盤光長(ときわみつなが)の筆と伝えられている。
 国宝「伴大納言絵巻」(東京・出光美術館蔵)などとともに、若狭国松永庄(現在の福井県小浜市)の新八幡宮に伝わり、その後、酒井家の所蔵となった。やがて、大正12年(1923)に売りに出され、昭和7年(1932)、天心の弟子でボストン美術館の東洋部長を務めた富田幸次郎に見出されて海をわたり、ボストン美術館の所蔵となった。

噴き上がる炎、劇的な焼き討ちシーン

平治物語絵巻 三条殿夜討巻
 

平治物語絵巻 三条殿夜討巻 (へいじものがたりえまき さんじょうどのようちのまき)
一巻 紙本着色 縦41.3 横700.3 鎌倉時代(13世紀後半)
Photograph (c)2012-2013 Museum of Fine Arts, Boston.

 平治元年(1159)に勃発した平治の乱は、その三年前に起きた保元の乱とともに、武士の台頭を示す大きな変革の一つであり、源平争乱の幕開けとなる戦いであった。「平治物語絵巻」は、それから約百年後に制作された絵巻で、もとは十五巻近い大作であったと考えられるが、現在は三巻と色紙状に切断された数葉のみが伝わっている。
 ボストン美術館が所蔵する「三条殿夜討巻」は、平治の乱のきっかけである藤原信頼(ふじわらののぶより)および源義朝(みなもとのよしとも)による後白河上皇の拉致と御所三条殿の焼討を描いている。三条殿を襲う信頼・義朝軍と、逃げ惑い命を落とす人々の様子がドラマティックに描かれており、合戦絵巻の最高傑作といえる。
 江戸時代には、三河国西端(現在の愛知県碧南市)の本多家に伝来していた可能性が高いが、その後美術市場に放出され、フェノロサの手を経てボストン美術館の所蔵となった。

第三章 静寂と輝き 中世水墨画と初期狩野派

 鎌倉時代から室町時代にかけて盛んに描かれるようになった水墨画。ボストン美術館は、このジャンルの優れた作品を数多く所蔵しています。その中心となる中世水墨画と初期狩野派作品のほとんどは、フェノロサとビゲローが収集したものです。とくに狩野派の作品は、この流派の草創期を語るうえで欠かすことのできない名品がそろっています。

主な作品

墨だけで空気までも描き出す

山水図 文清(ぶんせい)筆
 

山水図 文清(ぶんせい)筆
一幅 紙本墨画 縦73.2 横33.0 室町時代(15世紀後半)
Photograph (c)2012-2013 Museum of Fine Arts, Boston.

 十五世紀に活躍したとされる文清の貴重な作品。水辺の建物の中の人物を描いた前景と、遠くの山並みをとらえた後景という、二つの部分から成るシンプルな画面。わずか縦70cmほどの小さな絵であるが、緻密な描き込みと余白の絶妙なバランスによって、広大な世界を感じさせる。

フェノロサが愛した美しき観音

白衣観音図
 

白衣観音図 (びゃくえかんのんず)   狩野元信 筆 (かのうもとのぶ)
一幅 絹本着色 縦157.2 横76.4 室町時代(16世紀前半)
Photograph (c)2012-2013 Museum of Fine Arts, Boston.

 海中の岩座に座る白衣観音を描く。観音の身体をおおう衣の白と、背景の黒(墨)のコントラストにより、観音は岩窟の中に浮かび上がるように見える。筆者の狩野元信(1477〜1559)は、狩野派の二代目として自派の基礎を確立した人物で、本図は彼の代表作の一つに数えられる。フェノロサが彼のコレクションの中で最も高く評価した作品。

第四章 華ひらく近世絵画

 日本絵画史上、近世はもっとも多彩で華やかな時代です。本章では、室町時代以来、正統的な画風を継承してきた狩野派、豊臣秀吉の寵愛を受け、狩野派をおびやかすほどの存在となった長谷川等伯、装飾性の高い画風で知られる尾形光琳など、個性豊かな画家たちの競演をお楽しみください。

主な作品

受け継がれる琳派の美

松島図屏風
 

松島図屏風 (まつしまずびょうぶ)   尾形光琳 筆 (おがたこうりん)
六曲一隻 紙本着色 縦150.2 横367.8 江戸時代(18世紀前半)
Photograph (c)2012-2013 Museum of Fine Arts, Boston.

 荒磯だけを大胆に描いた躍動感あふれる作品。筆者は、俵屋宗達(生没年未詳)に私淑し、その画風を継承した尾形光琳(1658〜1716)。松島図は、俵屋宗達をはじめ琳派の画家が得意としたテーマで、本図も、宗達が描いた松島図屏風(アメリカ・フリーア美術館蔵)をもとに、光琳独自の解釈を加えて描いている。波の動きは一層ダイナミックになり、デザイン性の強い画面となっている。

体感せよ、巻き起こる波と風

龍虎図屏風
 

龍虎図屏風 (りゅうこずびょうぶ)   長谷川等伯 筆 (はせがわとうはく)
六曲一双 紙本墨画
各 縦154.2 横340.0 江戸時代 慶長11年(1606)
Photograph (c)2012-2013 Museum of Fine Arts, Boston.

 雨を降らせる龍と、風を呼ぶ虎が対峙する一双の屏風。筆者の長谷川等伯(1539〜1610)は、中国・南宋の画家、牧谿(もっけい)に私淑し、本図においても牧谿の「竜虎図」に学んでいる。奥行きの浅い空間に、筆勢を強調して描いた龍虎を配する。等伯の晩年、68歳の作と分かる。

豪華絢爛!大和絵の美

四季花鳥図屏風
 

四季花鳥図屏風 (しきかちょうずびょうぶ)   狩野永納 筆 (かのうえいのう)
六曲一双 紙本金地着色
右隻 縦160.3 横371.6
左隻 縦160.5 横370.0
江戸時代(17世紀後半)
Photograph (c)2012-2013 Museum of Fine Arts, Boston.

 水平・垂直・斜めの方向性を強調して描いた金地濃彩の豪華な四季花鳥図。右隻に春夏の景、左隻に秋冬の景を描く。筆者の狩野永納(1631〜97)は、安土桃山時代の豪壮な狩野派の画風を継承した京狩野家の三代目で、本図には父・狩野山雪の影響が強く認められる。

第五章 奇才 曽我蕭白

 近年、個性的な画風で注目を浴びる曽我蕭白(1730〜81)。ボストン美術館には、世界最大にして最高の蕭白コレクションがあります。エネルギーを画面に打ち付けたような直情的な画風でありながら、幻想的な空気も漂う蕭白の作品。シニカルなまなざしとユーモアが共存する蕭白の最初期から晩年までの作品が揃います。とくに、今回の展覧会に合わせて修復が行われた「雲龍図」は、必見です。

主な作品

百年の眠りから覚めた大迫力の龍

雲龍図
 

雲龍図 (うんりゅうず)   曽我蕭白 筆 (そがしょうはく)
八面 紙本墨画 各縦165.6 横135.0 江戸時代 宝暦13年(1763)
Photograph (c)2012-2013 Museum of Fine Arts, Boston.

 横幅十メートルを超える大画面に描かれた巨大な龍。圧倒的な存在感を放つが、暗闇からのぞく龍の表情は愛嬌があり、見る者の笑いを誘う。1911年、ボストン美術館に収められたときより襖から剥がされた状態で保管されてきた本図。このたびの展覧会に合わせて行われた修復によって枠が付けられ、初めて公開が可能となった。伝来は明らかでないが、寺院の襖であったと考えられる。蕭白34歳の作。

特別展『ボストン美術館 日本美術の至宝』“プチ”知識

ボストン美術館について

ボストン美術館について

アメリカで最も古い美術館の一つに数えられるボストン美術館は、1870年に設立され、1876年のアメリカ独立記念日に開館しました。開館時、5600点であった収蔵作品は、ボストン市民による寄贈によって増え続け、現在では、古代から現代までの45万点以上を数えます。そのうち、日本美術の収蔵品は10万点以上を占め、同館において重要な作品群と位置づけられています。

『日本美術の伝道者』アーネスト・フェノロサ(1853〜1908)

アーネスト・フェノロサ(1853〜1908)

 フェノロサは明治11年(1878)明治政府のお雇い外国人として来日し、東京大学教授として政治学・哲学などの教鞭を執りました。来日後ほどなくして日本美術に開眼し、研究と収集を進める一方で、鑑画会という美術団体を主宰して新日本画復興運動を進め、東京美術学校(現・東京藝術大学)の設立にも尽力します。
 明治23年(1890)に帰国した後は、ボストン美術館日本美術部長の職に就き、アメリカで熱心に日本美術を広めました。収集品は千点以上に及び、なかでも「平治物語絵巻」、尾形光琳筆「松島図屏風」などは第一級の名品として知られています。

『日本びいきの大コレクター』ウィリアム・スタージス・ビゲロー(1850〜1926)

ウィリアム・スタージス・ビゲロー(1850〜1926)

 ボストンの医師であり資産家であったビゲローは、明治15年(1882)に来日し、フェノロサと共に日本美術の収集に情熱を傾けるとともに、鑑画会の画家たちの経済的支援も行いました。日本文化に心酔し、天台宗に改宗して月心という法号を得るほどでした。
 帰国後は長らくボストン美術館の理事を務めました。彼の収集品は日本美術のさまざまなジャンルにわたり、その総数は四万点以上にのぼります。その中には曽我蕭白筆「雲龍図」をはじめとする傑作が数多く含まれています。

『「アジアはひとつ」をボストンで』岡倉天心(1863〜1913)

岡倉天心(1863〜1913)

 東京大学でフェノロサに学んだ天心は、卒業後フェノロサとともに東京美術学校の設立に関わるほか、帝国博物館(現・東京国立博物館)や日本美術院の創設にも携わりました。
 明治37年(1904)にはボストン美術館に迎えられ、のちに中国・日本美術部長として「アジアはひとつ」のスローガンのもと、東洋の美術品の体系的な収集に力を注ぎました。『東洋の理想』や『茶の本』を英文で刊行し、日本美術の普及に努めました。