過去の展示情報

特別公開 :古事記完成1300年記念特別公開

古事記伝と九州の国学者


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展示期間:

平成24年9月25日(火)〜11月18日(日)

展示場所:

文化交流展示室 基本展示室

概要:

 わが国最古の歴史書「古事記」。伊勢国松坂の医師・国学者である本居宣長が著した『古事記』の注釈書が『古事記伝』。平成24年(2012)が、「古事記」完成から1300年にあたるのを記念して、本居宣長自筆本の『古事記伝』を特別公開します。
 また、宣長の弟子で、肥後国山鹿郡の国学者である帆足長秋(ほあしながあき)・京(みさと)父娘が松坂に赴いて筆写した『古事記伝』写本を展示し、『古事記伝』が結んだ伊勢と九州の国学者との交流を紹介します。

主な展示作品一覧:

指定 展示品名称 員数 作者等 時代 所蔵者
重要文化財 版本古事記
宣長書入本(寛永版)下巻
1冊
(3冊のうち)
本居宣長書入 江戸時代・18世紀 三重県松阪市・
本居宣長記念館
重要文化財 古事記伝再稿本
巻二・二十七・三十
3冊
(44冊のうち)
本居宣長筆 江戸時代・寛政10年(1798) 三重県松阪市・
本居宣長記念館
熊本県指定文化財 古事記伝写本
巻十七・二十七・三十
3冊
(44冊のうち)
本居宣長著、帆足長秋・帆足京筆 江戸時代・享和元年(1801)巻二十七・三十、文化元年(1804)巻十七 個人蔵
(熊本県・山鹿市立博物館保管)
  直霊 1冊 本居宣長著、帆足長秋筆 江戸時代・天明6年(1786) 九州国立博物館
  呵刈葭 1冊 本居宣長著、富永正高(将高)筆 江戸時代・寛政10年(1798) 九州国立博物館
展示作品の紹介
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重要文化財 古事記伝再稿本 巻二十七

重要文化財 古事記伝再稿本 巻二十七
本居宣長筆
江戸時代 1798(寛政10)年
三重県・本居宣長記念館蔵

重要文化財 古事記伝再稿本 巻二十七

重要文化財 古事記伝再稿本 巻二十七
本居宣長筆
江戸時代 1798(寛政10)年
三重県・本居宣長記念館蔵

重要文化財 古事記伝再稿本 巻二十七
本居宣長筆
江戸時代 1798(寛政10)年
三重県・本居宣長記念館蔵

『古事記伝』は、日本最古の歴史書『古事記』の注釈書。伊勢国松坂の医師・国学者である本居宣長は、『古事記』こそが、儒教や仏教の影響を受ける以前の古代日本人の思想を伝えていると考えて研究。35年の歳月をかけて、『古事記伝』全44巻を執筆し、今日につながる『古事記』への高い評価を決定付けました。これは草稿にもとづいて宣長が清書した自筆本。巻二十七は、倭建命(やまとたけるのみこと*)の活躍を描く記事を注釈する巻です。宣長自筆本は、この他、序文を解説する巻二、神功皇后の事績を注釈する巻三十を展示します。
*本居宣長は倭建命の読み方について「やまとたけのみこと」と読むべきだとしています。

熊本県指定文化財 古事記伝写本 巻二十七(冒頭部分)

熊本県指定文化財 古事記伝写本 巻二十七(冒頭部分)
本居宣長著 帆足長秋(ほあしながあき)(巻三十)・京(みさと)(巻二十七)筆
江戸時代 1801(享和元)年
個人蔵(熊本県・山鹿市立博物館保管)

重要文化財 古事記伝写本 巻三十(神功皇后について注釈した部分)

熊本県指定文化財 古事記伝写本 巻三十(神功皇后について注釈した部分)
本居宣長著 帆足長秋(ほあしながあき)(巻三十)・京(みさと)(巻二十七)筆
江戸時代 1801(享和元)年
個人蔵(熊本県・山鹿市立博物館保管)

熊本県指定文化財 古事記伝写本 巻二十七・三十
本居宣長著 帆足長秋(ほあしながあき)(巻三十)・京(みさと)(巻二十七)筆
江戸時代 1801(享和元)年
個人蔵(熊本県・山鹿市立博物館保管)

帆足長秋は肥後国山鹿郡の神官で、本居宣長の弟子の国学者。生涯4度にわたり、松坂の本居宣長を訪ね、多くの宣長著書を書き写し、写本を肥後に持ち帰りました。その業績は肥後国における国学の礎を築いたとして高く評価されています。中でも4度目の宣長訪問となった享和元年(1801)には、妻と15歳の長女・京(みさと)をともない、70日余の松坂滞在の間に、京とともに、『古事記伝』の当時、未刊行部分であった巻24〜30を書き写して、肥後に持ち帰りました。その後、長秋と京は、同じく肥後の国学者であった長瀬真幸などが所蔵する本を借りて、全44巻の写本を完成させます。『古事記伝』の全44巻そろった写本は、帆足父娘によるものが唯一であり、貴重なものです。今回の特別公開にあたり、京が写した巻二十七、長秋が写した巻三十を、対応する宣長自筆本とあわせて展示します。この他、天孫降臨の舞台、高千穂について宣長が考察した巻十七の長秋写本も展示します。

担当研究員のコメント

2012年は、日本最古の歴史書『古事記』の完成から1300年の記念の年。各地で関連する展覧会やイベントが開催されています。
そもそも、『古事記』は奈良時代に編纂されてから江戸時代まで、その価値は『日本書紀』の次に位置付けられて来ました。この評価を逆転させ、今日にもつながる最古の歴史書としての価値を決定付けたのが本居宣長です。今回、宣長自筆本の『古事記伝』を九州で初めて展示します。とても几帳面な字で丁寧に書かれた自筆清書本の姿をぜひご覧下さい。
また、宣長の弟子で、肥後から松坂へ、『古事記伝』書写の旅に出た帆足長秋・京父娘の写本も、あわせて展示します。享和元年(1801)9月2日、帆足父娘が『古事記伝』写本を携えて松坂を去ったわずか27日後に、師の宣長は病没。写本の上ではありますが、師弟の永遠の別れから、211年ぶりの再会となります。宣長自筆本と帆足写本を一緒にみられる貴重な機会をお見逃しなく。

酒井芳司(展示課研究員)

ミュージアムトーク

展示室内で担当研究員が見どころをガイドします。

*ご参加の方は当日、時間までにお集まりください。

○ 日時:平成24年9月25日(火)15:00〜(30分程度)

○ 聴講料:無料(ただし文化交流展の観覧料は必要)

ミュージアム講座:考古VS歴史バトルトーク『古事記』の謎に迫る

考古学と歴史学それぞれの立場から、『古事記』について語り尽くします。

○ 日時:平成24年10月7日(日)13:30〜15:30

○ 場所:九州国立博物館1階 研修室

○ 定員:先着50名/当日受付、参加無料

=講師=
河野一隆(当館文化交流展示室長)
酒井芳司(同主任研究員)


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