過去の展示情報

トピック展示 :

名品でたどる室町から桃山の茶  茶の湯を楽しむIII


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展示期間:

平成22年9月14日(火)〜11月7日(日)

展示場所:

文化交流展示室 関連第9室

概要:

 本年10月16日で開館5周年を迎える九州国立博物館に、新しく宝満亭(広間棟)、吉兆庵(小間棟)という茶室が誕生いたしました。これを記念して、室町から桃山へという茶の湯の流れを伝世の名品によってご覧いただくトピック展示「名品でたどる室町から桃山の茶 茶の湯を楽しむIII」を開催いたします。
 油滴天目に代表される室町時代の日本人が愛した唐物(中国の古美術)、そうした素晴らしいものを知りながら侘びたる茶の世界を作るべく拾い上げられた灰被天目や大井戸茶碗、桃山時代の繁栄の中で日本人の創造性が花開いた桃山の茶陶。それぞれの時代を名品によってご覧いただき、較べていただくことで、茶の湯の素晴らしさをお楽しみ下さい

主な展示品:

主な展示作品
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展示作品の紹介
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浄土曼荼羅図

重要文化財
油滴天目(ゆてきてんもく)
中国・建窯 南宋 十三世紀 高七・〇㎝ 九州国立博物館

重要文化財
油滴天目(ゆてきてんもく)
中国・建窯 南宋 十三世紀 高七・〇㎝ 九州国立博物館

高台周辺を除き、全体に掛けられた漆黒の釉、その内外面に銀色に輝く斑文が浮かび上がる。「油滴」の名はその斑文が油の滴のようであるところからという。「建盞」<けんさん>と呼ばれる建窯の黒釉碗の中で、釉中の鉱物が再結晶し、斑文として現れたものが油滴であった。室町将軍家の書院飾について著した『君臺観左右帳記』では、書院を飾るのにどのような唐物の茶入や喫茶の碗を用いるかを記す。そこで曜変<ようへん>に継ぐものとして挙げられているのが油滴であった。内箱蓋には「ゆてき」、「天目」と墨書され、千利休あるいは古田織部の筆によるという。江戸後期には、大名茶人として名高い松平不昧の所蔵するところであった。油滴の中でも天目形の姿、そして現れた斑文の美しさで知られる名碗である。

九相図

黄瀬戸立鼓花入(きせとりゅうごはないれ)
美濃 安土桃山 十六世紀 高一九・五㎝ 文化庁

黄瀬戸立鼓花入(きせとりゅうごはないれ)
美濃 安土桃山 十六世紀 高一九・五㎝ 文化庁

黄瀬戸とは桃山時代に美濃で焼かれたもので、名称は「黄色の瀬戸焼」という意味で、瀬戸と美濃とが産地として区別されていなかったことによる。美濃の桃山茶陶の中で志野や織部に先行して生まれた黄瀬戸では、造形的に端正な形をとり、独特の品格を有している。この花入は鼓を立てた形であるところから立鼓と呼ばれるもので、胴の中ほどで絞り、口縁と底部に向って開いていく。底部は平底の高台を削りだし、全体にやや黄色がかった灰釉を施している。祖形となったのは書院の床飾にも用いられた胡銅の花入であるが、胴下方では削りによって表面の釉調に変化が現われ、金工には無い柔らかな表情のあるものとなっている。

担当研究員のコメント

茶の湯は難しいというイメージもありますが、前後の時代と較べていただくことで、どう凄いのか、どう楽しいのかを感じていただけると思います。武野紹鴎(たけの じょうおう)、千利休ゆかりの作品を含む名品の数々が九博に揃いました。この機会に是非ご覧ください。

伊藤嘉章(学芸部長)


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