過去の展示情報

トピック展示 :

港市長崎 - 「鎖国」のなかの異国情緒 -


展示期間:

平成20年12月10日(水)〜平成21年1月18日(日)

展示場所:

文化交流展示室関連11室

概要:

 江戸時代は「鎖国」の時代といわれます。たしかに日本人の海外渡航や外国人の日本来航はきびしく制限されていましたが、日本が特定の外国・異域と交流しつづけていたこともまた事実です。北の「松前口」(松前藩とアイヌ)、南の「薩摩口」(薩摩藩と琉球)、西の「対馬口」(対馬藩と朝鮮)と「長崎口」(幕領長崎と中国・オランダ)、これら「四つの口」をとおして日本は「開国」しており、外交・貿易や文化交流がおこなわれていたのです。

 なかでも江戸時代に国内有数の港市(港湾都市)に発展した長崎は、中国・西洋との交流の窓口となり、日本とグローバル世界をむすぶ重要な役割をはたしました。中国人居留地(唐人屋敷)とオランダ人居留地(出島)が形成されたことも特徴的であり、さまざまな人・モノの交流の舞台になるとともに、情報・技術の発信地・受信地にもなりました。また、幕末に西洋列強諸国が「開国」を要求してくると、たちまち外交・軍事の最前線としての性格を色濃くしました。

 今回のトピック展示「港市長崎」は、「『鎖国』日本とグローバル世界」「港市長崎の情景」「ゆきかう人・モノ・情報」の3章から構成しています。「鎖国」体制のなかでも異国情緒に満ちあふれていた「港市長崎」に想いをはせていただければ幸いです。

展示リスト:

主な展示作品
展示作品の紹介
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長崎港図 川原慶賀筆

長崎港図 川原慶賀筆(ながさきこうず かわはらけいがひつ)1面
日本 江戸時代 19世紀 九州国立博物館

長崎港図 川原慶賀筆(ながさきこうず かわはらけいがひつ)1面
日本 江戸時代 19世紀 九州国立博物館

 川原慶賀(1786-1860以降、通称登与助、字は種美)は、江戸時代後期の長崎の画家です。父川原香山と石崎融思(1768-1846)に絵を学び、オランダ商館長ブロムホフや商館医シーボルトの求めに応じて日本の文物を描き、文化8年(1811)ごろには出島に自由に出入りできる「出島出入絵師」となりました。
 本作品は長崎の金比羅山山頂あたりから、長崎港外までを鳥瞰した図で、港を中心に長崎の町と郊外が周囲に描かれています。本図左側に唐人屋敷と中国船、出島とオランダ船、上側には戸町、西泊番所など、19世紀初めごろの長崎の様子が詳しくわかります。川原慶賀筆とされる長崎港図のなかで、慶賀の落款・印章がある唯一の作品であり、この点でも注目されます。

山水花鳥螺鈿蓋付ナイフ入れ

山水花鳥螺鈿蓋付ナイフ入れ(さんすいかちょうらでんふたつきないふいれ)1対
日本 江戸時代 19世紀 九州国立博物館蔵

山水花鳥螺鈿蓋付ナイフ入れ(さんすいかちょうらでんふたつきないふいれ)1対
日本 江戸時代 19世紀 九州国立博物館蔵

 江戸後期から幕末にかけて、長崎からは大量の螺鈿器が西欧に輸出されていきますが、これはその先駆けをなす作品です。古代ギリシャの壺をおもわせるこの容器は、パーティーなどの際にナイフを収めるためのもので、薄い鮑貝を用いた螺鈿技法によって、山水花鳥の文様が色鮮やかに描かれています。
 日本の漆器は、桃山時代に始まって、近代に至るまで、さまざまな形やデザイン、技法で飾られたものが輸出されていきますが、黒漆地に螺鈿でエキゾチックな図柄を表わした「長崎もの」とよばれる作品群は、それら輸出漆器の掉尾を飾るものといえましょう。