博物館からのお知らせ

博物館情報:
文化財保存修復室にて、古糊(ふるのり)を作りました

 古糊は、文化財の修復・保存に関わる装こう(そうこう)技術にとって、必要不可欠な材料です。糊は、小麦粉から取り出したデンプン質の接着剤です。数年から10年間寝かせたものを古糊と呼びます。毎年、寒(かん)の時期に作ることから寒糊(かんのり)とも称されます。

▽糊ができるまで

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水で小麦のデンプンを溶いた後、加熱します

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焦げつかないように、約50分間混ぜ続けます
一人でまわすと力尽きてしまうので、途中で交代していきます


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糊作りに参加した人は、和紙に筆で署名しました

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ちょうどバックヤードツアーの時間と重なり、
来館者の方々も覗いていかれます


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50分後、甕(かめ)に移します
最初は液体だったデンプンが、ドロドロの糊状になっています


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甕1つ分の糊を作るので、根気強くこの工程を続けます

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9分目まで入れたら出来上がりです

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完全に冷えた後、水を張り封をして、暗所にて保管します

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甕の側面には名前を記した和紙が貼られました
10年後まで名前が残されることになりました


 10年間も糊を寝かせることには理由があります。作業では通常作りたての新糊(しんのり)を使いますが、古糊を必要とする工程が出てきます。約10年間寝かせた古糊はカビが生えにくく、接着力が弱まっており、新糊にくらべて引っ張りが少ないため、柔らかく仕上げることができるのです。

 今回作った糊もきっと文化財の修復に役立つことでしょう。10年後、甕を開ける日が楽しみです。