針摺石

筑紫野市の針摺には、室町時代のものと考えられる高さ2.4mの石が立ち、阿弥陀三尊を表す梵字が刻まれています。この石には次のような話が伝わっています。
大宰府に配流された菅原道真公は、自分が無実であることを訴えて天判山(天拝山)に登り祈りましたが、その帰りにこの場所を通りかかると、一人の翁が斧を石にあてて懸命に摺っていました。それを見て不思議に思った菅公が、「何をしているのか?」と訪ねると、翁は斧を摺り減らして針を作るのだと答えました。菅公はその言葉に心を打たれ、何事も精魂込めて勤めなければ成就できないと悟り、また牛に載って引き返して天判山の頂上でひたすら天に祈りました。
この石を「針摺石」といい、そこの地名を針摺と呼ぶようになりましたと伝えられています。
(太宰府市『太宰府市史 民俗資料編』より)

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針摺石

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筑前名所図会に描かれた「針摺」伝説(写真提供:福岡市博物館)