御所の器 - 公家山科家伝来の古伊万里
御所の器 - 公家山科家伝来の古伊万里

特集展示
御所の器 ―公家山科家伝来の古伊万里

江戸時代、天皇家の食膳具には菊御紋をあしらった品格のある伊万里焼の染付磁器が用いられていました。それらは毎月一日に新調され、使用後のものは公家、門跡、宮中に仕える役人・女官などに「お下がり」として下賜されたと伝わります。それらは、現在学術上、「禁裏御用品」と呼ばれています。
藤原北家の流れを汲む公家・山科家には、200点近くの禁裏御用の伊万里焼が伝来しました。同家には、食膳具である皿や杯のみならず、煙草盆や香炉など、江戸時代から明治時代の様々な種類の御所の器が下賜されました。本展では、山科家に伝来したこれらの貴重な禁裏御用品の全貌を初公開します。また、その生産地である佐賀・有田町に伝わる歴史資料や、宮中行事をあらわした絵図、さらに公家町遺跡から出土した禁裏御用品の陶片などを合せて紹介します。宮中を舞台に花開いた、清らかな伊万里焼の魅力をご堪能いただければ幸いです。

会期

令和4年9月27日(火)~11月20日(日)

展示場所

文化交流展示室 第11室、基本展示室

観覧料 【文化交流展(平常展)】

一 般 700円
大学生 350円
高校生以下・18歳未満および満70歳以上の方は無料

*その他詳細は こちらのページをご覧ください。

展示構成と主な展示作品

プロローグ - 公家山科家

本章では、藤原北家の流れを汲み、平安時代末期より宮中で要職を歴任してきた公家・山科家についてご紹介します。山科家は、家職として装束の調達と着装を行う衣紋道山科流を受け継ぎ、今上天皇の御大典でも着装を務めるなど、歴代天皇の側に長く仕えてきました。そのような歴史的な背景があって、同家に禁裏御用品が下賜されてきたと考えられます。本章では、衣紋道山科流に基づいた天皇の装束や、山科家歴代当主による日記のなかでも、最も重要な史料として評価されている『言継卿記』などを公開し、公家・山科家について紹介します。

言継卿記

言継卿記ときつぐきょうき

室町時代・天文13年(1544)
東京大学史料編纂所
展示期間:前期(9/27~10/23)

言経卿記

言経卿記ときつねきょうき

安土桃山時代・慶長3年(1598)
東京大学史料編纂所
展示期間:後期(10/25~11/20)

言継卿記

孝明天皇御料こうめいてんのうごりょう 御引直衣おひきのうし

江戸時代・19世紀
福岡市博物館
展示期間:前期(9/27~10/10)

言経卿記

昭憲皇太后御料しょうけんこうたいごうごりょう 小袿こうちき

明治時代・19世紀
福岡市博物館
展示期間:後期(10/12~11/20)

第一章 山科家に伝来した御所の器

本章では、山科家に下賜された禁裏御用品のうち、主に組物(セット)をご紹介します。天皇家の食膳具であった禁裏御用品の中心は皿や碗ですが、山科家にはそれらが10枚(口)以上の組物でいくつも伝来しており、貴重な資料となっています。

昭憲皇太后(明治天皇皇后)御下賜 煙草盆

昭憲皇太后しょうけんこうたいごう明治天皇皇后めいじてんのうこうごう 御下賜ごかし 煙草盆たばこぼん

明治時代・19世紀
山科有職研究所
展示期間:通期

染付菊御紋竹節文皿

染付菊御紋竹節文皿そめつけきくごもんたけぶしもんざら

江戸時代・18世紀後半~19世紀前半
山科有職研究所
展示期間:通期

第二章 有職文様と宮中生活の器

有職ゆうそく 文様とは、宮中の装束、調度、建築などに用いられた伝統的な文様のことをいいます。禁裏御用品には、天皇家の家紋である菊御紋とともに、有職文様の数々が描かれています。本章では、山科家伝来品を中心に、意匠の観点から、禁裏御用品を紐解きます。また、煙草盆、香炉、香合、手焙など、宮中の生活で用いられた磁器製の道具をご紹介します。さらに、禁裏御用品を生産した佐賀・有田の辻家の資料や、流通の拠点であった伊万里市に伝わる歴史資料を公開します。

染付菊御紋鶴乱亀甲文香炉

染付菊御紋鶴乱亀甲文香炉そめつけきくごもんつるみだれきっこうもんこうろ

江戸時代・19世紀
山科有職研究所
展示期間:通期

染付菊御紋鳳凰菊牡丹撫子文手焙

染付菊御紋鳳凰菊牡丹撫子文手焙そめつけきくごもんほうおうきくぼたんなでしこもんてあぶり

明治時代・19世紀
山科有職研究所
展示期間:通期

第三章 宮中行事と山科家

禁裏御用の伊万里焼は、宮中行事や公家の年中行事でも用いられていたようです。 本章では、宮中儀式行事の記録絵図である「旧儀式図画帖きゅうぎしきずがじょう 」と山科家に伝来した史料を合わせて、天皇の正月二日の正式な食事である大床子御膳だいしょうじおもの と、十月の行事である新茶御壺口切しんちゃおつぼくちきりをご紹介します。

旧儀式図画帖 第29帖

旧儀式図画帖きゅうぎしきずがじょう 第29帖

藤島助順作
明治30年(1897)
東京国立博物館
展示期間:前期(9/27~10/23)

旧儀式図画帖 第39帖

旧儀式図画帖きゅうぎしきずがじょう 第39帖

藤島助順作
明治30年(1897)
東京国立博物館
展示期間:後期(10/25~11/20)

藤島助順作

萬延二年大床子御膳参勤備忘まんえんにねんだいしょうじのおものさんきんびぼう

江戸時代・万延2年(1861)
山科有職研究所
展示期間:前期(9/27~10/23)

「御所の器─公家山科家伝来の古伊万里」リーフレット

特集展示
「御所の器─公家山科家伝来の古伊万里」リーフレット

税込価格:770円

編集・発行:九州国立博物館
印刷・製本:大同印刷株式会社
デザイン:俣野裕三(MATANO OFFICE)
発行日:2022年9月27日
判型:A4判、18頁

関連イベント

申し込み不要

講演会&トークセッション
「宮廷文化と御所の器」 

日時 :
令和4年10月16日(日)
13時30分~15時00分(13時00分開場)
会場 :
九州国立博物館1階 ミュージアムホール
定員 :
270名
講師 :
山科言親氏(衣紋道山科流若宗家)
トークセッション :
山科言親氏、浜中邦弘氏(同志社大学歴史資料館准教授)、橋爪伸子氏(同志社大学非常勤講師)
松浦晃佑(九州国立博物館研究員)、酒井田千明(九州国立博物館研究員)
聴講料:
無料(ただし文化交流展またはポンペイ展の観覧券が必要です)
申し込み不要、先着270名

きゅーはく☆とっておき講座
「御所の器の魅力」

日時 :
令和4年11月5日(土)
10時30分~11時30分
場所 :
九州国立博物館1階ミュージアムホール
定員 :
270名
講師 :
酒井田千明(九州国立博物館研究員)
聴講料:
無料

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