
三輪嘉六[九州国立博物館長]
みわ・かろく、1938年生まれ。奈良国立文化財研究所、文化庁主任文化財調査官、東京国立文化財研究所修復技術部長、文化庁美術工芸課長、同文化財鑑査官、日本大学教授、九州国立博物館設立準備室長を経て、2005年4月より現職
市民と共生する博物館を目指して
九州国立博物館は、皆さんの温かい応援と熱い期待のなかで平成17年10月16日に開館しました。まだほんの駆け出しの新しい博物館といえます。独立行政法人国立文化財機構の内の国立博物館は東京、奈良、京都の3館がありますが、当館はこれに次ぐ4番目の国立博物館として九州・太宰府の地に建っております。ここは古く「遠の朝廷」とよばれた日本古代史上の一大舞台ですので、そうした歴史環境に育まれながらこの地の新しい文化的環境の形成に寄与できることを念願しております。そのためには市民と共に、そして市民社会と共生していく博物館、このことを常に追究しながら発展していくつもりでおります。何よりも市民にとって分かり易い博物館、親しみ易い博物館への道筋を歩みつづけるつもりですので、よろしくお願い致します。
さて、博物館も開館から4年余が経ちました。夢中で過ごした年月でしたが、その間、季節折々の姿形、人々の様々な通過儀礼や生活のさまざまな態様が博物館活動にも大きく反映することを学び、また経験することができました。今後これらから得られた多くの課題をより良い博物館の展開に生かしていきたいと思っております。
ここで博物館への来館者を中心とした利用状況を少し紹介しておきましょう。いうまでもなく館活動の基本は文化財資料の展示にありますが、文化交流展示室(いわゆる常設展示で、月に30〜50点の文化財の陳列換を行いながら、常時800〜900点を展示。そして折々のテーマを選び年数回にわたるトピック展示を開催。)と特別展示室(年に4〜5回、1回を6〜10週間程度の開催)で展示を行っております。その他、多くのボランティアの人達の力を借りながら、あじっぱ(アジアの広場の意)とよぶ教育普及の場での展示をはじめ、常に館全体を多目的に利活用しております。博物館のもう一つの大きな役割である文化財の保存についても、博物館科学を前面に出した活動に取組んでおります。それだけに日頃他所では見る機会の少ない文化財の修理や保存の実際を目の辺りにすることが可能な場を設け、多くの方々に文化財保存の一面を理解いただけるような取り組みをしております。
こうしたなか、開館から1,257日経った平成21年10月11日には早くも700万人の入館者を迎えることができました。本当に多くの方々に深い関心を抱いていただき、また温かい応援を得ながら今に展開していることを感謝しております。
わたくし達は、これからも更に多くの人達の期待に応えられるよう「学校より面白く、教科書より分かり易い」と掲げてきた開館以来の目標を再確認しつづけて進みたいと思っております。勿論、館の質的な向上に向けて努力し、素晴らしい文化財の収集や魅力的な展示をはじめ調査研究、国際交流等を通じて博物館全体の充実を図っていきます。そして九州に在ることの意味を主張して「日本文化の形成をアジア史の視点から見る」を館のコンセプトにしておりますが、これをより具現化できる歩みをつづけたいと考えております。何はともあれ、皆さまにとって、いつお出掛けいただいても新鮮な文化の場を提供できることを念頭に展開するつもりですので、どうぞよろしく願います。
平成22年1月