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小学生時代のことであるから、もう30年以上も前の話である。 地元の縁日に出かけた時、さまざまな露店が並ぶ中で不思議な動きをする骸骨人形を目にした。何もしないと普通に立っているのに、台座部分の底を指で押すと、ヘナヘナと力が抜けたように崩れてしまう。当時はまだその仕組みを理解できることもなく、一体どのようになっているのか不思議でならず、その奇妙な動きに一目で魅了されてしまった。そして気がつくと、縁日で食べまくろうとしていたお金をすべて使い、その骸骨人形と急いで家に帰ったことを今でもはっきりと覚えている。はっきりというのは、走っている途中で転んでしまい、それでも大切な骸骨人形を守ろうと必死だったため、足をかなり擦りむいて痛い思いをして帰ったからである。 そんなに痛い思いをしたにもかかわらず、あの骸骨人形はどこにいってしまったかは覚えていない。しかし、私が立体の魅力にはまってしまったのは、実はこの時なのかもしれないなどと考えてしまう。 今思うと、骸骨人形は単純な仕掛けである。前回の「おばけの金太」と同様にバネの力を使ったもので、台座部分のバネがテグス糸をピンと張ることにより骸骨が直立し、バネを指で縮めてテグス糸を緩めることにより、バラバラと崩れ落ちるように倒れてしまう。 今回、取り上げる金沢の郷土玩具である「米喰いねずみ」は、その元祖ともいえる玩具である。 「米喰いねずみ」は、1830年頃に人気を博していた「からくり人形」の影響をうけて作られている。U字型にしならせた竹ひごをバネの力によりピンと張り、頭としっぽをぴんと伸ばしているねずみが、竹ひごの部分を押さえると糸の緊張が解けて緩み、頭としっぽを下げて米を食べるという仕組みである。この玩具は本物のねずみが物を食べるように、かなり繊細な動きを楽しむことができる。何でも1880年の天保の飢饉の際、人々がお米や食べ物をたくさん食べたいという願いから、足軽小者の手内職により創り出された玩具であるらしい。張力を利用した代表的な玩具といえるだろう。 それにしても、この玩具の発想には驚かされる。普通はひもを引っ張る、回す、振るなどの力を加えることにより何らかの動きがでてくるのであるが、この玩具は逆に力を加えることにより、何も作用しなくなることをうまく利用しているところが面白い。しかも、ねずみがお米を食べる動作は本当に自然であり、力の作用がなくなったことにより、力が抜けるどころか、むしろお米を勢いよく食べるようにも見える。これは、食べ物を満足に食べられずに力が出ないのを隠しながらも、勢いよく食べてやるという様を表現しようとしたことに、創り出した足軽小者の意図があるのではないだろうか(考え過ぎかもしれないが・・・)。 今では、「米喰いねずみ」の仕掛けを使った玩具は、アニメや遊園地のキャラクターなど、様々な種類が市場に出回っているため、あまり新鮮さや大きな驚きはなくなったように思える。しかし、「米喰いねずみ」のように飢饉の最中にもかかわらず、このような素晴らしい発想を思いつくということを考えると、この時代の生活は貧しかったのかもしれないが、そうした状況での人々の心の中は、きっと豊かで希望に満ちていたに違いない。 豊かな心や希望を玩具に託す人々の気持ち・・・、現代の私たちがこれからも見習い、そして受け継いでいかなければならないことなのかもしれない。
<参考資料> ・川崎巨泉「おもちゃ画譜」1979村田書店 ・有坂與太郎「日本玩具史」1935建設社 ・おもちゃ美術館 http://www.toy-art.co.jp/museum.html ・東京おもちゃ美術館 http://www13.plala.or.jp/goodtoy/ttm/ |