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まず、石膏原型台座部分の修復と補強である。破損した台座部分の大きな破片をつなぎ合わせ、大まかなかたちを組み上げることから始めた(図1)。破損部はスタッフ(サイザル麻を脱脂した丈夫な繊維であり、石膏の裏打ち補強に適している)でつなぎ合わせるのであるが(図2)、今回はうまくいかない箇所もあるために削り合わせながら組み上げることとした。また、小片についてもできる限りつなぎ合わせた。そして、補強のステンレス心棒を入れるために内側の石膏を削り取り、つなぎ合わせをしっかりとするために内側にスタッフを使って補強を行った。 強度の問題と錆防止のため、直径50mm、厚1.5mmのステンレスパイプを石膏原型の内側形状に沿って加工し(図3)、先ほどの台座部と胸像部のつなぎの補強材として使用した。ステンレスパイプの加工は意外と大変で、かつ慎重を要した。その加工したステンレスパイプをはめ込むため、原型胸部内側の余分な石膏を削り取った。その際、胸下部の針金(台座との補強のために入れたと思われる)は錆も著しく、これ以上の石膏の変色を防がなければいけないことと、今回の修復には必要性がないと判断し、取り去ることとした(図4)。胸部の石膏は厚いため、補強を入れるための溝を削り取った(図5)。ステンレスパイプは石膏胸部本体に合わせるように切り込みを入れ、胸部形状に合うように曲げ、できるだけ石膏原型の形状に影響がでないように加工を行った。さらに、より強度を増すために直径6mmのステンレス丸棒をパイプから沿わせ、胸部上方まで入れて補強を行った。丸棒も石膏原型の形状に合わせながら、表面に影響がでないよう石膏を削って埋め込むことにした。 ステンレスパイプとステンレス丸棒の補強準備ができたところで、ブロンズ像とゲージのポイントの最終チェックを行った。収縮率にしたがってブロンズ像とのポイントを合わせ、ポイントを固定したところでブロンズ像をゲージから外し、石膏原型をゲージに設置するための準備を行った。石膏原型は台座の破損が著しく、胸部をそのまま乗せただけでは正確な角度や方向の修復が不可能なため、胸部本体をゲージに宙吊りにして浮かすことにより(図6・7)、正しい台座との角度や方向を導き出すこととした。 ブロンズ像で計測したポイントゲージをもとに、石膏原型用のポイント位置で微調整を行った。位置が正確に決まったところで、あらかじめパイプを入れて修復した台座部分を後方よりゲージと本体に合わせて位置を決め、石膏とスタッフで留めた。 台座と本体がしっかり留まったのを確認し、宙吊り状態を慎重に解きながら、作品表面に傷がつかないよう養生してうつ伏せに寝かせた。そして、底面とステンレス丸棒を使った補強準備をした。5本の6mmステンレス丸棒をパイプと本体に沿わせ、スタッフで固定し補強を行った。台座の底面もスタッフでしっかりと補強固定し、石膏で充填した(図8)。 ブロンズ像と石膏原型を比較し、形状に狂いがないか再度確認をとるために、ゲージの宙吊り用枠をはずし、ブロンズ像と並べながら比較を行った。収縮率を考慮した計測と、目視による微妙な違いに気を配りながら確認を行った(図9・10)。 修復の仕上げとして、原型表面の欠損している箇所をブロンズ像にならい、石膏の接着性の問題や盛りつけのタイミングを考慮しながら、ブロンズ像の表面に忠実に再現を行った。また、背面は借用のブロンズ像にならって蓋をすることにした。 このような大掛かりな修復の後、ラグーザ作「山尾庸三像」の石膏原型は見事によみがえったのである。
<参考資料> ・ 木村 毅 編「ラグーザお玉 自叙伝」1980 恒文社 ・ 金子一夫「近代日本美術教育の研究 明治・大正時代」1999 中央公論美術出版 ・ 高村光雲「高村光雲懐古談」1970 新人物往来社 ・ 東京国立近代美術館 編「フォンタネージ,ラグーザと明治前期の美術」1977 東京国立近代美術館 ・ 河上 眞理「ヴィンチェンツォ・ラグーザ伝の検討−マリオ・オリヴェーリ著『大理石の芸術家』を中心に−」早稲田大学 地中海研究所 オンライン版 地中海研究所紀要 第2号,pp29−43 ・ 澄川喜一、本郷 寛、矢野 真、大沼邦康「ヴィンチェンツォ・ラグーザ作『山尾庸三像』石膏原型修復とブロンズ像収蔵について」 2002 東京芸術大学美術学部紀要第37号,pp5−16
*次回は7月上旬掲載予定
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