ろじ[路知]
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連載:芋のおもしろ大変身 〜江戸時代の料理書「甘藷百珍」〜

津路野 里子


テーマ 「芋のおもしろ大変身」〔4〕
「雪花菜いも」(きらずいも)
「巻雪花菜いも」(まききらずいも)


今回は「雪花菜いも」「巻雪花菜いも」を紹介します。


ちょっとしたおもてなしの一品になる料理です。前回紹介しました藷精を作るときに できるカスを使用した料理で、物を大事にする心を勉強できます。料理名に使われている雪花菜というのは、おからのことを言います(1)。諸精を作るときに出るかすがおからによく似て白い事から、この料理名がついたと思われます。

雪花菜(きらず)いも
 六六藷精を製時の滓なり。油少し鍋に煎(いり)つけ、豆油少しさし、麻子・陳皮末・黒胡麻・生姜骨殳とひとつにいれ、よくまぜ合わす。△右のことく製、柴苔か?腐または青昆布に巻て、小口切にしたるを、巻雪花菜いもといふ。△八八片食いものごとく藷の精を打展し、右の雪花菜いも包み、油あけにしたるをいもの丸裹?といふ。
(六六のいもの精をつくる時のかすでつくる。油を少し鍋に煎りつけ、醤油を少しさし、麻子、陳皮の粉、黒ごま、しょうがのかけらを一つにして、いもの精のかすとよく混ぜ合わせる。右のようにしたものを、のりか湯葉または青昆布で巻き、小口切りにする。これを巻き雪花菜いもという。八八片食いものように、いもの精を打ちのばし、右の雪花菜いもを包んで、油揚げしたのを、いもの丸つつみ揚げという。) 巻雪花菜いも

右の雪花菜いもの所にみへたり。
(右の雪花菜いもの項を参照。)
生にて擦し、水に入、銅篩にてこし、其水を淘(いせ)、底にしづみたる精をとり、水四、五度もかへ、日に乾し、たくはへ置、時に臨て用ゆ。尤、寒中の制を佳とす。△葛の代りにつかひて、吉野葛上品に勝れり。たくはへ置て平常用ゆべし。
(いもを生のままおろし、水に入れて、すいのうでこし、その水を流し、底に沈んだ精をとり、水を四、五回かえる。そののち陽で乾かし、たくわえて置いて、必要な時に取り出して使う。寒中に作ったものがもっともよい。葛の代わりに使っても、吉野葛の上等なものよりすぐれている。貯蔵して常々使用するとよい。)


今回使用する香辛料の説明
麻子:麻はクワ科の1年草の実。麻子(おのみ)と呼ばれ、灰色の卵円形でかみつぶすと芳香があり薬用・食用となるほか油をとります。中央アジア原産と言われていますが日本への渡来もきわめて古く、古代より重要な宣威厳食物として栽培されています。

胡麻:西域の故国から中国に運ばれ、麻子に似ている事から胡麻と呼ばれたそうです(2)。古代の重要な食用油脂源でしたが、高価で、室町時代には荏油に、江戸期に入っては菜種油に普段用はとって代わった。だが、胡麻油には特殊の芳香があるので、天ぷら屋では欠かせなかったそうです(3)

陳皮:生薬の一種。蜜柑(橙)の黄熟した果皮で芳香性、苦味があります。健胃・鎮咳・去痰剤として古くから用いられていたそうです(4)

生姜:日本では古くから栽培し、江戸時代には早出し栽培も行われていたそうです。そして、生姜が魚肉の毒気を消すなどの種々の薬効のあることが経験的に知られ、大衆的な香辛野菜として広く用いられるようになりました(5)

作り方

雪花菜いも
〈材料〉
藷精のかす 100g
麻子 10粒
陳皮末 適量
黒胡麻 1t
生姜 1片
油 1t
醤油 1t
〈作り方〉 〔1〕鍋に油を入れ熱し、麻子・陳皮の粉・黒胡麻・生姜のみじん切りを入れ炒める。
〔2〕〔1〕に藷精のかすを加えてよく混ぜ合わせ醤油で味付けする。
※焦げ付きやすいので気をつける。
〈材料紹介〉

〈材料紹介〉

巻雪花菜いも(5人分、14個)
〈材料〉
生湯葉1枚
(11×9cm)
海苔1枚
(9×20cm)
〈作り方〉
上記の雪花菜いもを湯葉や海苔で巻き3・4つぐらいに切り分ける。




出来上がった、巻雪花菜いも
(湯葉巻きと海苔巻き)


黒いつぶつぶは、麻の実と黒胡麻

次回は、いよいよ前回作った藷精使う料理を紹介します。お楽しみに!!

参考文献
(1)川上行藏・西村元三郎『日本料理由来事典』上、同朋舎出版、1987、P.352
(2)川上行藏・西村元三郎『日本料理由来事典』上、同朋舎出版、1987、P.437
(3)日本風俗史学会『図説江戸時代食生活事典』(新装版)、雄山閣出出版、P.141
(4)日本国語大辞典第二版編集委員会 小学館国語辞典編集部『日本国語大辞典』第二版 第九巻、小学館、2001、P.190
(5)川上行藏・西村元三郎『日本料理由来事典』中、同朋舎出版、1987、P.552

《次回は4月上旬掲載予定》


プロフィール:
津路野里子(つじの・りこ)
栄養士