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博物館情報:【開催報告】

北野武&阿川佐和子トークショー「日本の文化とモノ作り」

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和やかなムードで盛り上がったトークショー

 開催中の特別展「工芸のいま 伝統と創造 - 九州・沖縄の作家たち - 」の関連イベントとして、映画監督の北野武さんとエッセイスト阿川佐和子さんによるトークショーが開催されました。

 北野さんと阿川さんはトークショーに先立ち、特別展「工芸のいま 伝統と創造」の会場を大変熱心に観覧され、「作家のこだわるポイント」の説明に興味深く耳を傾ける北野さんの表情がみるみる「作り手」の顔に。昼食の時間がなくなるほど特別展示室での予定時間を大きくオーバーしていました。

 トークショーでは、今回の特別展に作品を出品されている陶芸家の中島宏さんと14代酒井田柿右衛門さん(ともに国の重要無形文化財保持者「人間国宝」)に急遽登壇していただくことになり、北野さん、中島さん、柿右衛門さんという三人の「作り手」という立場からの話題で盛り上がります。

 北野さんは、「最近わかったんですが、実は父はペンキ屋の前に、伝統的な弓を作る職人をしていた」と、ご自分のお父さんのことを話され、「職人のわざやその道のプロというものが重要」と語られる場面も。
 阿川さんも「織物の職人を目指していたこと」をお話しされ、「そこでプロというものについて教えられた経験がある」とのことでした。

 その後、「工芸は作家のアート性が出過ぎると成り立たない」、「バランスが難しい」との北野さんの話に、中島さんは「内面の美しさを感じとれるというのが日本人の良さなんですよね。柿右衛門さんの作品には名前が入ってないでしょう。だけど、誰もがその作品を見たらすぐに酒井田柿右衛門の作品だと分かる。それがプロというものですよ。本当のプロというのは全てを知っていて、敢えてその技術をあからさまに出さず、さりげなく見せていくところにある」と応えられていました。

 話は技術の話題になり、柿右衛門さんは、「私は父からよりも祖父から技術を教えてもらったが、父のスケッチブックをこっそりと見たこともある」、「たぶん父も私のスケッチをみたことがあるでしょう」と冗談を交えて観客からの笑いを誘い、北野さんは「奇をてらった刺身の盛り合わせより、街の地味な店で食う煮付けた魚のほうがうまいことがよくある」、「余計なものをそぎ落としたものが、かえって美しい」と話されました。

 トークショーでは、中島さんが発言するたびにマイクを離してしまい、聞きにくくなると、すかさず阿川さんが「中島さん、マイク、マイク」と注意する場面も。阿川さんの見事な司会により会場は大いに盛り上がりました。