博物館からのお知らせ

平成17年度購入文化財の紹介2

新羅古墳資料(しらぎこふんしりょう) 一括:考古



「出」字形装飾のついた金冠


分類:考古
時代:朝鮮 三国時代・6世紀
品質:金銅、鉄地金銅、木


 「出」字形装飾のある金冠(きんかん)などの金製装身具や馬具などとともに、積石木槨墳(つみいしもっかくふん)から出土したものと思われる、貴重な金属製出土一括遺物です。金冠1、冠帽1、沓(くつ)2のほか、鞍(前輪、後輪各1)、辻金具(つじかなぐ)6、雲珠(うず)1、杏葉(ぎょうよう:魚尾形6、心葉[楕円]形1,棘葉[とげは]形3)を含んでいます。
 大韓民国大邱(てぐ)市(慶尚北道南部)にある飛山洞古墳群から類品が出土しており、本資料も加耶(かや)地方(同国南東部)の有力首長に対して、慶州(慶尚北道南東部)に拠っていた新羅王家が与えたものと考えられます。それぞれに白灰色の粘土が付着していることから、同一の古墳から出土したものと思われます。
 必要な保存処理などを済ませてから、文化交流展(平常展)第㈼テーマで活用の予定です。


釈迦如来像(しゃかにょらいぞう) 一躯:美術




分類:彫刻
時代:朝鮮 統一新羅時代・9世紀末〜10世紀初め
品質:鉄
法量:像高(坐高)65.1?


 両足先を組んで座る鉄製の釈迦如来像は、右手先を右膝先から下ろす降魔触地印(ごうましょくちいん)を結んでいます。顔立ち、肉体や衣の表現など、統一新羅時代の仏像彫刻を代表する大韓民国慶尚北道の慶州・石窟庵(せっくつあん)の石造如来坐像(8世紀半ば)に通じる特徴を示しています。しかし、全体的に肉体の幅や厚みを減らす一方で、膝前の厚みを増やすなど、統一新羅時代末期の作例に特有な特徴をも合わせ持っています。そのため、9世紀末〜10世紀初めに作られたものと考えられます。
 朝鮮半島において、鉄仏は、高麗時代末期から統一新羅時代にかけて、多数制作されています。像内には、灰色系及び赤褐色系の中子(なかご)の土が残るほか、頭内部及び右膝付近内部には鉄芯が見られます。
 文化交流展(平常展)第㈽テーマの関連展示室6「アジア人の理想の姿」で、展示中です。


銀貼海獣葡萄鏡(ぎんばりかいじゅうぶどうきょう) 一面:考古




分類:考古
時代:中国 唐時代・8世紀
品質:青銅鋳造・銀製
法量:径11.1×10.9?


 禽獣(きんじゅう)と葡萄唐草文(ぶどうからくさもん)を表す鏡背面に、海獣葡萄文を表現する銀製の薄板を貼り付けた鏡です。怪獣の鈕(ちゅう・つまみ)を中心に、内側には葡萄文8個とそれぞれ異なった姿をとった躍動的な怪獣5体が、また外側には葡萄文の房と葉の間に静かな鳥8羽が対照的に表されています。さらに、周囲には忍冬文(にんどうもん)が巡らされています。
 奈良の西大寺から出土したと伝えられ、銀貼海獣葡萄鏡としてはわが国唯一の出土例とされています。
 文化交流展(平常展)の第㈽テーマで展示中です。


白磁円面硯(はくじえんめんけん) 一面:工芸




分類:陶磁
時代:中国 唐時代・9世紀
品質:青銅鋳造・銀製
法量:口径15.3 輪台径17.4 高6.8?


 古代の中国・日本の役人にとって、硯(すずり)は、筆や墨とともに不可欠な文房具のひとつでした。また、律令制度下における文書行政や集権支配の確立を象徴する道具でもありました。15脚で、中央には墨を磨(す)るための平らな部分(陸[りく])が、その周囲には墨をためるための凹み(海[うみ])があります。どこにも墨痕(ぼっこん)や使用痕(しようこん)がなく、未使用のようです。
 この作品のように、多脚で輪台付きの白磁製硯は、7世紀後半以降、中国の陝西省・河南省・湖北省などで製作されたと考えられています。なかでも大宰府ゆかりの菅原道真所用と伝える、大阪・道明寺天満宮所蔵の白磁円面硯(国宝[唐時代・8世紀])が有名です。
 文化交流展(平常展)第㈽テーマの関連展示室8「遣唐使とシルクロード」で展示中です。


(1)大宰府牒案 弘仁十一(八二一)年三月四日付:美術
本紙 縦 28.5 横 51.8



大宰府牒案 弘仁十一(八二一)年三月四日付


分類:書跡 時代:平安時代・保安元(1120)年写し 品質:紙本墨書 法量:縦 28.5×横51.8?


(2)大宰府牒案 斉衡二(八五五)年七月十一日付:美術



大宰府牒案 斉衡二(八五五)年七月十一日付


分類:書跡
時代:平安時代・保安元(1120)年写し
品質:紙本墨書
法量:縦 28.5×横51.8?


 大宰府が観世音寺に宛てて発給した公文書の写し2通です。正文は早くに散逸してしまっているため、大変貴重な資料です。観世音寺(かんぜおんじ)が東大寺の末寺となったことに伴い、保安元(1120)年に観世音寺が東大寺へ提出したものの写しです。観世音寺が提出したことを証す「観修理印」の朱印が本文と観世音寺三綱(さんごう:僧の階級の1つ)の署名の部分に捺されています。律令(りつりょう)の規定に基づく公式様文書であり、わが国の律令受容の実態と公文書主義の浸透を示す格好の資料です。また、公文書主義の象徴ともいえる印章の具体的な使用方法を知ることができます。
 (1)の内容は、筑前国講師に替わって観世音寺講師が四王寺の悔過を行うことを命じたものです。宝亀5(774)年に大野城内に建立された四王寺や大野城の管轄についての変遷を具体的に示しています。
 (2)の内容は、大宰府が観世音寺の要請を受けて、仏教儀礼に必要な経費を確保するため、布薩戒本田と放生田(ほうじょうでん)を設置することを中央政府に請い、許されたことを示すものです。観世音寺が、西海道九州一円の僧を統轄する「府の大寺」として、大宰府の庇護の下に寺領の拡大を図った姿をうかがうことができます。
 ともに文化交流展(平常展)第㈽テーマの律令のコーナーで展示予定です。


花卉鳥獣刺繍飾布(かきちょうじゅうししゅうしょくふ) 2枚:工芸

(1)



分類:染織
時代:中国 明時代・16世紀後半〜17世紀初め
品質:絹刺繍
法量:縦251.3×横220.0?



(2)



分類:染織
時代:中国 清時代・19世紀
品質:絹刺繍
法量:縦247.2×横232.0?


(1)
 ヨーロッパ向けに作られた中国製ベッドカバーの貴重な作例です。輸出用に制作されたため、中国本土には残っていません。全面に刺繍による華やかな文様がみられます。中央円内に鳳凰(ほうおう)と牡丹(ばたん)を、円の外には孔雀(くじゃく)と尾長鶏(おながどり)と牡丹をちりばめています。外側には虎・麒麟(きりん)・獅子(しし)・鹿・象・鷺(さぎ)・天馬(てんま)などのおめでたい動物(瑞獣・ずいじゅう)と牡丹文が表現されています。濃淡のついた青・緑・赤・黄・白などの多彩な色糸による刺繍であること、金糸や馬の尻尾の毛が用いられているところに、中国、明時代の刺繍の特徴がよく表れています。

(2)
 上記の飾布(1)とよく似たデザインで作られた飾布。本作品に用いられた刺繍糸のうち、紫、赤やピンクの糸には、19世紀以降に登場する化学染料特有の色調が認めるため、製作時期も19世紀になるものと思われます。また馬の尻尾の毛も用いられていません。兵庫県にある黒川古文化研究所には、清朝とされる同種の飾布が保管されています。
 お子さんたちのためのスペース「あじっぱ」(エントランスホールにあります)で展示している婚礼用寝台にのせています。


婚礼用寝台(こんれいようしんだい) 1基:工芸




分類:漆工
時代:中国 清時代・19世紀
品質:木、漆
法量:幅230.0×奥行き200.0×高さ240.0?


 用いられている装飾には、豆や桃、石榴(ざくろ)など、多産や吉祥を象徴する植物文様のほか、中国の日常生活や伝説の場面、鹿や鶴、獅子や蝙蝠(こうもり)などの動物文様などがあります。正面入り口には、「蓮子花開及第紅」「宜男草發連科緑」という対になる文章が掲げられ、蝶や双魚のような提げ飾りのモチーフが浮き彫りで表現されています。いずれも、婚礼用寝台にふさわしいおめでたい模様といえます。全面を漆で塗り、所々に金箔が押されています。浮き彫り、透かし彫り、螺鈿に着彩などさまざまな技法を駆使しています。
 中国では、たくさんの子供たちを婚礼用の寝台の上で遊ばせて、子孫繁栄を願う習慣があったといい、この寝台もその洗礼を受けたのではないでしょうか。
 お子さんたちのためのスペース「あじっぱ」でご覧いただけます。