過去の展示情報

トピック展示 :

変化する観音

展示期間:

平成20年8月8日(金)〜9月15日(月・祝)

展示場所:

文化交流展示室第11室

概要:

 私たちに最もなじみの深い仏さま、観音。
 もともとは梵語でアヴァローキテーシュヴァラ、漢訳されて観世音(かんぜおん)または観自在(かんじざい)と呼ばれる仏教の代表的な菩薩(ぼさつ、悟り(さとり)を求め、衆生(しゅじょう)を救うために多くの修行を重ねる者)です。その名が意味するように観音(観世音・観自在)は、苦悩する世間の人々の音声を自在に観じるとされ、衆生を災難から救う慈悲(じひ)の精神を人格化した仏さまとして、熱烈な信仰をあつめました。

 その信仰は、鳩摩羅什(くまらじゅう、344-413)が漢語に翻訳した法華経(ほけきょう、妙法蓮華経)、なかでもその一章である普門品(ふもんぼん、観世音菩薩普門品)第二十五を通じて流布しました。この普門品は「観音経(かんのんぎょう)」の別名で独立してひろく読まれ、観音信仰の大きな拠り所となりました。その経文には、もしその名を称えれば災いから救済され、また姿を千変万化させてこの世のあらゆる場所に現れる、という観音の功徳(くどく)が語られています。

 今回のトピック展示では、このように多彩に変化する姿形や諸難救済(しょなんきゅうさい)の情景をテーマとした作品をあつめて、いにしえの人々が観音によせた願いと祈りを、東アジアの中国・朝鮮・日本で描かれた仏教絵画を通してご覧いただきます。

展示リスト:

主な展示作品
展示作品の紹介
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変化する観音(観音三十二応現図)

変化する観音(観音三十二応現図)
李自実筆 絹本著色 201.6×151.8cm
朝鮮・朝鮮時代 明宗5年(1550) 京都・知恩院

変化する観音(観音三十二応現図)
李自実筆 絹本著色 201.6×151.8cm
朝鮮・朝鮮時代 明宗5年(1550) 京都・知恩院

 中央に坐す観音が変化して人々を苦難から救済する場面を広大な山水に描き込む。朝鮮の王妃が短命で崩じた国王・仁宗(インジョン、1515-1545)の冥福をいのり描かせた、朝鮮時代を代表する仏教絵画である。

白衣観音(白衣観音図)

白衣観音(白衣観音図)
鏡堂覚円賛 絹本墨画淡彩 88.2×37.6cm
鎌倉時代 13〜14世紀 九州国立博物館

白衣観音(白衣観音図)
鏡堂覚円賛 絹本墨画淡彩 88.2×37.6cm
鎌倉時代 13〜14世紀 九州国立博物館

 日本最古の白衣観音図で、初期水墨画のなかでも最も表現の優れた作品である。細やかな宝冠・胸飾りの確かな線描や龍をとりまく雲のグラデーションの表現には、高度な水墨画の技法が駆使されている。