展示情報

トピック展示 :
中国を旅した禅僧の足跡
旅の中の夢、夢の中の旅。時を歩む禅僧、無夢一清。

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展示期間:
平成26年5月27日(火)〜7月6日(日)

展示場所:
文化交流展示室 関連第11室

主催:
九州国立博物館

後援:
大本山東福寺・臨済宗東福寺派、公益財団法人 禅文化研究所

概要:

日中の文化交流を端的に示す書跡の一つの柱に、墨蹟(禅僧の書)があります。 鎌倉時代から南北朝時代にかけて、新たな仏教を大陸の禅に見出そうと、高名な禅僧の下で修行するため、多くの日本僧が海を渡りました。本場の厳しい指導と、それに応える修行者の研鑽により、宋・元時代の禅とその風土は日本に移植され、茶道をはじめとする、その後の日本文化の精神的な源泉の一つとなりました。

こうした日本僧の一人に、無夢一清(1294〜1368)がいます。元に滞在すること30年と長く、多くの師友と交流をもちました。それを証するかのように、無夢のために書き贈られた文章や詩、すなわち墨蹟が9通伝存し、入元中の足跡と交流を今に伝えます。こうした墨蹟は、彼の禅僧としての成長、精神的境地の深まりを物語るものです。ちなみに、一人の日本僧に与えられた現存する墨蹟数として、9通は突出した多さであり、無夢一清の修行の歩みを特色づけています。

帰国後は、京都・東福寺の第30世住職をつとめましたが、師の玉渓慧瑃ゆかりの備中(岡山県)・宝福寺の基礎を築くことに専念しました。中央で禅僧のエリートとして活躍するよりも、一地方に禅を根付かせようとする生き方を選んだようです。

ところで、無夢一清は、関連する遺品が大変少ないこともあり、今まで顧みられる機会が少なかった禅僧です。無夢一清にかんする初の展覧会である本展を契機として、あらためて歴史上の人物として銘記いただければ幸いです。

展示作品の紹介
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主な作品
樵隠悟逸墨蹟 与無夢一清偈

樵隠悟逸墨蹟 与無夢一清偈 しょういんごいつぼくせき むむ(むぼう)いっせいにあたうるげ
中国・元時代 至順3年(1332)
九州国立博物館所蔵

樵隠悟逸墨蹟 与無夢一清偈 しょういんごいつぼくせき むむ(むぼう)いっせいにあたうるげ
中国・元時代 至順3年(1332)
九州国立博物館所蔵

樵隠悟逸は、元時代の代表的な禅僧の一人。無夢という号にちなんで「邯鄲の枕」の故事を踏まえ、修行のコツを示したものです。心が睡らなければ妄想は自然に消えると説いています。


惟堂守一墨蹟 与無夢一清偈

惟堂守一墨蹟 与無夢一清偈 いどうしゅいちぼくせき むむ(むぼう)いっせいにあたうるげ
中国・元時代 至順4年(1333)
九州国立博物館所蔵

惟堂守一墨蹟 与無夢一清偈 いどうしゅいちぼくせき むむ(むぼう)いっせいにあたうるげ
中国・元時代 至順4年(1333)
九州国立博物館所蔵

修行仲間であった惟堂守一が、いまの江西省から湖南省への無夢の旅立ちに贈った送別のことば。惟堂守一の筆跡はこの1件のみ。この墨蹟の存在することで、彼がこの世にいたことが明らかとなるのです。


展示作品:
指定 作品名称 員数 時代 所蔵 展示期間
  無準師範墨蹟 尺牘(写) 1幅   東京国立博物館 通期
重要文化財 雲頂徳敷墨蹟 尺牘 1幅 中国・南宋時代/13世紀 東京国立博物館 通期
重要文化財 円爾墨蹟 法語 1幅 鎌倉時代/13世紀 和泉市久保惣記念美術館 前半2週
重要文化財 馮子振墨蹟 与放牛光林語 1幅 中国・元時代/14世紀 九州国立博物館 後半4週
国宝 了庵清欲墨蹟 進道語 1幅 中国・元時代/至元7年(1341) 東京国立博物館 通期
  石室善玖墨蹟 尺牘 1幅 南北朝時代/14世紀 東京国立博物館 通期
重要文化財 古林清茂墨蹟 与無夢一清偈 1幅 中国・元時代/泰定4年(1327) 三井記念美術館 後半2週
重要文化財 龍巌徳真墨蹟 与無夢一清偈 1幅 中国・元時代/至順2年(1331) 根津美術館 前半4週
  樵隠悟逸墨蹟 与無夢一清偈 1幅 中国・元時代/至順3年(1332) 九州国立博物館 通期
  惟堂守一墨蹟 与無夢一清偈 1幅 中国・元時代/至順4年(1333) 九州国立博物館 通期
  月江正印墨蹟 与無夢一清偈 1幅 中国・元時代/14世紀 個人 通期
  東陽徳煇墨蹟 与無夢一清偈 1幅 中国・元時代/至元5年(1339) 東京国立博物館 通期
  石室祖瑛墨蹟 与無夢一清偈 1幅 中国・元時代/至元3年(1337) 五島美術館 通期
重要文化財 石室祖瑛墨蹟 与無夢一清偈 1幅 中国・元時代/14世紀 北村美術館 通期
  了庵清欲墨蹟 与無夢一清偈 1幅 中国・元時代/至元6年(1340) 静嘉堂文庫美術館 通期
県指定 宝福寺条々式目 1巻 南北朝時代/延文6年(1361) 岡山・宝福寺 通期
県指定 天得庵定書 1巻 南北朝時代/応安元年(1368) 岡山・宝福寺 通期
県指定 上津江庄内三別所年貢料足定書 1幅 南北朝時代/応安元年(1368) 岡山・宝福寺 通期
県指定 般若庵寺領置文 1幅 南北朝時代/応安元年(1368) 岡山・宝福寺 通期
県指定 般若庵什物置文 1幅 南北朝時代/応安元年(1368) 岡山・宝福寺 通期
  木造玉溪慧瑃坐像 1躯 南北朝時代/応安五年(1372) 岡山・宝福寺 通期
  無夢一清位牌 1基 室町時代/文亀3年(1503) 岡山・宝福寺 通期
  前田家伝来名物裂帖 1帖 中国・元〜明時代/13〜17世紀 九州国立博物館 通期

*訂正


季刊情報誌「アジアージュ」Vol.32で「無夢一清坐像」(室町時代 15〜16世紀 岡山・宝福寺所蔵)としてご紹介した肖像彫刻は、当館搬入後に実施した詳細な調査の結果、無夢一清の師で、聖一国師(円爾)の弟子にあたる「玉溪慧瑃」の肖像彫刻(南北朝時代 応安五年(1372))であることが判明いたしました。ここに訂正させていただきます。
関連イベント

ミュージアムトーク

日時:
平成26年6月3日(火)
15時00分から30分程度

会場:
九州国立博物館 関連第11室

聴講料:
無料(ただし文化交流展の観覧料は必要)

図録
墨蹟の口語訳が付いた図録を発行します。(700円)


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