人体の仕組みを正確に知ることは、病気を治療するために基本的なことです。このため人類は、洋の東西を問わず、人体の構造に深い関心を寄せてきました。その手段として、遺体の解剖が行われ、とくに西洋においては解剖書が出版されて、医学の発展に寄与しました。 東洋医学よりも格段に具体的に、人体の仕組みを表現した西洋医学の解剖書は、近世の日本に大きな影響を与えました。前野良沢(まえのりょうたく)や杉田玄白(すぎたげんぱく)による『ターヘル・アナトミア』翻訳と『解体新書』出版が、わが国における蘭学勃興の端緒となり、近代医学のはじまりを告げたことはあまりにも有名です。
この特別公開では、はじめての近代的な解剖書であり、『ターヘル・アナトミア』にも影響を与えた、ベサリウス著『ファブリカ』初版本を九州で初公開するとともに、『レメリン解剖書』や『ターヘル・アナトミア』など、近世日本にもたらされた西洋解剖書と日本における翻訳書をあわせて展示し、解剖書をつうじた近世の日本と西洋との交流を紹介します。
指定 | 名称 | 時代 | 所蔵 |
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重要文化財 | 伝屍病肝心抄并痩病治方 | 鎌倉時代 13世紀 | 文化庁蔵 |
ファブリカ ベサリウス著 | スイス 1543年 | 東京医科歯科大学図書館蔵 | |
阿佐井野版医書大全 | 室町時代 16世紀 | 九州国立博物館蔵 | |
針聞書 茨木二介元行筆 | 室町時代 永禄11年(1568) | 九州国立博物館蔵 | |
和漢三才図会 寺島良安編 | 江戸時代 正徳3年(1713)頃 | 東京国立博物館蔵 | |
レメリン解剖書 | オランダ 1613年 | 医療法人原三信病院蔵 | |
ターヘル・アナトミア ラテン語版 | オランダ 1732年 | 九州国立博物館蔵 | |
重訂解体新書 杉田玄白・大槻玄沢編 中伊三郎図 | 江戸時代 文政9年(1826) | 九州国立博物館蔵 |